第59話 仲良く号泣

おかしい……

帰郷の為、第一城門前で見送りをされていたはずなのに……


なぜかエヴィンカル様の執務室でセディスさんに抱き締められている。

エヴィンカル様やユシル、ニチカ、ポチマルが俺を心配そうな表情で見ていた。

エヴィンカル様と目が合う。


「あの、どうして私は、セディスさんに抱き締められているのでしょうか?」

「正気に戻ったか。」

「よかったわ……」

「よかったです。」

「元気になった?」

「もとに戻った?」

「ラハートフ君、エリザに嫌いって言われて大泣きしたのよ。」

「!?」


そ、そうだ……

エアルリーザ様に嫌いって言われたんだ……

俺が我儘なこと言って嫌われたんだ……


「ユシル達に聞いたけど、その後ずっとぼーっとしてたみたいね。」

「……」

「村に着いてお母さんにエヴィに報告に行ってきなさいって言われてこっちに移動してきたってユシルが言ってたわ。」

「そう、なんですね。」

「それでここに来ても話しかけても反応がなかったから、安静の魔法を使ったのよ。」

「……」

「ラハートフ、エリザは、」

バン!


エヴィンカル様の言葉の途中でバン!と突然音を立て扉が開く。

息を切らしたエアルリーザ様が入ってきた。


「お父様っ!ラハートフが、来ていると聞きま、して、」


エアルリーザ様の視線がエヴィンカル様から俺の方へ移り言葉が途切れる。


「え、エアルリーザ様……」


エアルリーザ様と目が合うが、俺はすぐに目を逸らし俯く。

エアルリーザ様が近づいてきた。

俯く視界にエアルリーザ様の足が見える。


恐る恐る顔を上げるとエアルリーザ様が深呼吸をして口を開いた。


「ラハートフ、ごめんなさい!」

「え?」


なんで来たのっ?帰ってっ!とか拒絶の言葉が出ると思っていたら、謝罪の言葉が出てきて困惑する。


「家宝にしたいほど大切な物を交換しましょうって言われて交換する人はいないわよね。私もお父様やお母様に貰ったものをそれより良いものだからといって交換したくないわ。私、お姉さんなのに、恥ずかしいからって、ラハートフにあげたものを取り上げようとして、ラハートフの気持ちを考えないで、本当に、ごめんなさい!」

「え、あ、いえ、えと、俺も、エアルリーザ様の気持ちを考えないで、我儘を言いました。俺も渡すなら納得のいくものを渡したいっていうのをわかっていたのに、貰った嬉しさでエアルリーザ様のことを考えないで自分を優先してしまいました。申し訳ありません。」

「ううん。ラハートフは悪くないわ。」

「いいえ、エアルリーザ様は悪くありません。」

「私が悪いのっ!」

「俺が悪いんですっ!」

「ううん、私が」

「いいえ、俺が」

「私が」

「俺が」

「エリザ、ラハートフ、落ち着きなさい。」


何度か自分が悪いと譲らない俺とエアルリーザ様をエヴィンカル様が止めた。


「「は、はい。」」

「エリザはラハートフが嫌いなのか?」

「あの時は嫌いと言ってしまいましたが嫌いじゃありませんっ!ラハートフは素晴らしい魔法を使いますから、尊敬しています!」

「だ、そうだ。良かったな、ラハートフ。」

「は、はい、嫌われてなくで、よがっだでず、う、う、うああああああん。」

「な、なぜ泣きますのでずが、う、う、うああああああん。」




仲良く大声で泣くラハートフとエアルリーザ。

そんな二人にセディスが魔法をかける。


「『スリープ』」

「「……」」


魔法をかけられ眠ったエアルリーザをメリルが、ラハートフをセディスが抱える。


ラハートフが起きていたら「いつからそこにいたんだっメリルさん?!」と驚いていただろう。


ユシルがラハートフの涙を流していた顔を拭く。


「嬉しくて泣き、つられて泣くなんて子供ね。」

「そうだな。エリザもこんなに泣くとはな……」

「ラハートフ様が来てから、感情豊かになりました。」


エヴィンカルは二人を微笑ましく見る。


「仲直りできてよかったです。」

「元気になったー。」

「仲直りしたー。」


ニイカとポチマルは二人の近くで喜びの舞い(他人から見たら不思議な動き)をしていた。


ーーーーー

あとがき

セディルアトス

愛称セディス、エヴィンカルの契約精霊。

金髪のぼんきゅっぼんのお姉さま


ユシル

『究極の植物魔法』の契約精霊、ラハートフの契約精霊。

小麦色の健康的な肌のお姉さん、全長約四十センチ


ニイカとポチマル

『旅のオトモ』の契約精霊、ラハートフの契約精霊。

ニイカは元気っ娘、全長約二十センチ

ポチマルはもふもふわんこ

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