第60話 決意を新たに

目を覚ますとオルヴェルド公爵家の城の使わせてもらっている部屋の天井が見えた。


「知っている天井だ。」

「起きましたか?」

「起きたのー?」

「起きたかー?」


ユシル、ニイカとポチマルが俺の顔を覗き込んで見ていた。


「あ、うん。」


そうだ、嫌われていない嬉しさにエアルリーザ様の前で大泣きしてしまったんだ……


うがああああああ


思い出して恥ずかしさのあまり布団を被る。


「どうしたのですか?」

「かくれんぼか?」

「かくれんぼ!」


久々に感情が抑えられなかったな……

まぁ五歳児としては普通なのかな?

前世の記憶を持つことも難儀なもんだな。


あー、エアルリーザ様の前に出にくいよ……


「恥ずか死ぬ。」

「だ、駄目ですよ!」

「ラハートフ死んじゃ駄目!」

「死ぬなー!」


布団の上から揺らしているのがユシル、布団をぼふぼふ叩いているのがニチカとポチマルだ、たぶん。


布団の中の暗闇は落ち着くな……


ふぅ…………


たとえ嫌われたとしてもエアルリーザ様を助けるんだ。

嫌いって言われただけでなに取り乱しているんだ俺!

いや、嫌いって言われたらめっちゃ落ち込むけど、号泣するだろうけど、したけどっ!

守る救うのには関係ないだろ俺!


嫌われたくないけど……


魔法はそれなりっぽいけど、精神力が弱いな。

スポーツは心技体を鍛えるなんて言うよな。

よしっ!

騎士の訓練の参加許可をエヴィンカル様に取ろう!


立ち上がり、ばさっと布団をのける。


「きゃっ。」「きゃー。」「うわあー。」

「俺、復活っ!」

「よ、よかったです。」

「驚いたのだ!」

「元気になった!」

「心配してくれてありがとう。世話をしてくれてありがとう。」


ユシル達に感謝を言うと頭を差し出してきたので撫でたついでに魔力を与えた。


『ゲート』を使い一度母さんに会いに行った。

やはり心配をかけていたようで「よかったよかった。」と泣きながら抱き締められた。

「エアルリーザ様と仲直りできた、と思う。」と言うと「よかったわね。」と頭を撫でられた。


他人とは違い、安心感?心がほっとする?

心が暖まる母さんの撫でと抱きしめ。


他人とは違うのだよ他人とは!

さすが母親さすが母さん!と、まぁいつまでもこうしていられないから用事を言い「頑張ってきなさい。」と送り出された。


「これが母親の力、私も負けられません!」

「ユシルは姉のような存在でいつも頼りにしてるよ。」

「そ、そうですか。うふふ。」

「わたしはー?」

「ぼくはー?」

「イチカとポチマルには元気を貰ってるよ。いつもありがとう。」

「えっへへー。」

「わっふぅ。」


俺は念話、ユシル達は直接声を出して話ながら、エヴィンカル様の執務室に向かう。


俺も声を出していたら、一人言をぶつぶつ言う変な子だって見られるからね。

何か見える子なのねとかならまだましだけど、危ない子よあの子はとか思われたらショックだ……


なんて思ったりユシル達と話していると執務室に着き、入室の許可を取り部屋に入る。

いつも変わらずのぼんきゅっぼんのお姉さまセディスさんとエヴィンカル様がいる。


「もう大丈夫そうね。」

「はい、ありがとうございました。」

「ラハートフ君はオルヴェルド家の救世主だからいいのよ。」

「救世主?」

「ラハートフ、感謝を言いに来たのか?」

「あ、いえ、あ、それもありますが、えーっと、エヴィンカル様に騎士の訓練の参加の許可を貰いたくて来ました。」

「騎士の訓練?」

「はい。私は精神力が弱いと思いまして、」

「精神力が弱い?」

「精神力を鍛えるなら騎士の訓練がいいかと思いました。」


エヴィンカル様とセディスさんがこそこそと話し始めた。


「(五歳の子供なんだ、よな?)」

「(そうね。)」

「(やはり普通じゃないな。精神力が弱いと五歳の子供が言うか?)」

「(ラハートフ君はいじょ、成長が早い子なんでしょう。)」

「(今、異常と言おうとしたな?)」

「(そんなことはないわよ。ほら、許可を出してあげたら?)」


話し合いが終わり、エヴィンカル様が俺を見る。


「……騎士の訓練の参加を許可する。」

「ありがとうございます!」

「明日から参加するか?」

「はい!参加したいです!」

「わかった。騎士団に伝えておく。場所はわかるな?」

「魔法修練場の隣ですよね?」

「そうだ。一の鐘がなる前には訓練場にいるように。」

「わかりました。」


許可を貰ったことを母さんに伝えて、明日の訓練の為早めに寝た。


ーーーーー

あとがき

一の鐘、AM6:00くらい。


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