第66話 増える働かず貰えるお金

「ようほう?」

「アマミツや蜜蝋を得る為にアマミツバチを飼育することだ。」


あぁ、養蜂か。


オルッシュに第二城壁が出来上がって数日経ったある日、オルヴェルド公爵当主エヴィンカル様に呼び出され「オルッシュでようほうをやらないか?」と執務室で聞かれ、咄嗟にようほうという言葉を養蜂と思い浮かばず首を傾げると教えてもらった。


「養蜂を領都のオルーヴェではなくオルッシュで、ですか?」

「ラハートフの従魔なのだからオルッシュで養蜂をするのは当たり前だろう。できたらオルッシュの特産品に増える。」


エヴィンカル様、良い人すぎない?

エヴィンカル様以外の貴族当主様と会ったことがないけど、他の貴族様なら自身の近くでやらせる、「やれ」と命令してくるんじゃないかな?


「やらないか(命令)?」かもしれないけど、エヴィンカル様はそんなことないと思う。

エヴィンカル様達オルヴェルド公爵家(一人を除く)には色々配慮してもらっているから、やって成功させたいとは思った。


「天敵がいない安全安心な棲みかという条件で契約しましたから、領都やオルッシュむら、じゃなく町でアマミツを作ってくれるかわかりませんが、彼女達にオルッシュでアマミツを作ってくれないかとお願いしてみます。」

「完全に安全とは言い切れないが、見廻りや常在の領兵を追加しよう。それと依頼を出して冒険者を増やすことを伝えてくれ。」

「わかりました。」


執務室からファイン達アマミツバチの為の『テント』にやって来た。

オトモ契約したファインとキララ、それから古参で進化したハイアマミツクイーンバチ達とファインがハイアマミツエンプレスバチに進化してから産まれたハイアマミツクイーンバチ達が集まってくれた。


「━━というわけで、俺の生まれ育った村とお世話になっている領都というところでアマミツを作ってくれる子はいないかな?」

「「「……」」」


「うわあっ!」


問いかけに数秒沈黙の後にファインとキララを先頭に全員が、全蜂が一斉に俺へ迫ってきて恐怖を感じて悲鳴を上げて後ろへ下がった。


ぴたっと止まるファイン達。

悲しげな様子でその場で留まるファイン達。

涙を浮かべ始めるファイン達。


仕方がないよね!めっちゃ怖かったもん!


「ご、ごめん。一斉に迫ってきて驚いた。」


謝り、ファイン達を落ち着かせ、「近付いたのは村と領都で作ってくれるってこと?」と確認を取った。

ファインとキララ曰くファイン含め皆が「ラハートフの役に立ちたい!」「私に任せて!」「私にやらせて!」と嬉しいことを言ってくれた。


話し合いの結果、二ヵ所だから二人のリーダーを選び任せるではなく、全蜂で交替でアマミツを作ることになった。

日か週か月かいつ交替するかはわからないが、ファインが「任せてください!」と言っていた。


「ありがとう。」とお礼を言い、オルヴェルド公爵家の執務室に戻る。

今回はオルヴェルド公爵家の契約精霊セディルアトスことセディスさんもいた。


「話し合いの結果、オルッシュでアマミツを作ってくれます。」

「そうか。よかった。」

「あとオルーヴェでも養蜂をやることはできますか?」

「まぁ!ラハートフのところのアマミツは美味しいのよね!エヴィ!できるってラハートフに言いなさい!」

「やることはできるが、土地が狭いな。」

「試しに作った畑くらいの広さがあればいいです。」

「うむ……。」

「あ、ガラスの温室ってありますよね?」

「あるな。」

「その畑を一階としてその上にガラス温室を何個か積み重ね城壁より低い塔型の温室を作れば狭さの問題なんて全くなくなります。」

「そんな高い温室なんて見たことないわ……」

「……」

「柱や階段、床は任せてください。オルッシュの城壁を作った経験を活かします。ガラスも材料があればもしかしたら作ることができるかもしれません。」

「ラハートフに任せれば、すぐできそうね……」

「あぁ……」


二人がなぜか疲れたような表情を浮かべる。


「すぐに設計図とガラスの用意をしておこう。」

「ありがとうございます。お願いします。」

「アマミツが作られるようになったらオルッシュでは収集はオルッシュの者に、販売や運搬、加工などはこちらの者に、オルーヴェでは全てこちらの者に任せようかと思うがいいか?」

「できたらでいいのですが、収集以外のことに興味を持った人がいたらなんですが、見習いとして雇っていただけると嬉しいです。」

「その者にやる気があれば問題ない。」

「ありがとうございます!」

「では、次は養蜂で得るお金について話をしよう。」

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