第49話 オトモ第1号
伝わるわけないかぁとか虫相手になにやってんだろう俺……とか落胆した翌日。
あの(話をかけた個体かわからないけど)アマミツバチが首周りがもふっとした毛皮がある大きなアマミツバチと共に俺の前に飛んできた。
言葉は伝わっていたのか?
決定権を持っている上司?長?女王蜂?偉い蜂を連れてきたのか?と驚き、少し歓喜して笑顔になった。
「初めまして、私はラハートフです。昨日の話の件ですか?」
首もふアマミツバチが肯定するかのように上下に宙を飛んだ。
俺にはそう見えた。
昨日話したことと旅のオトモの『コンパニォン』を説明した。
「安全安全な棲みかというのはこんな感じです。『テント』」
『テント』の魔法を使った。
実験に使っている色んな植物が植わっている空間のテント。
「ゆっくり中に入ろうとしてみてください。」
「……」
首もふアマミツバチが左右にふらふらと飛ぶ。
何処から入るかわからないのか?
「……?!」
入り口の布を少し捲って入るよう促した。
首もふアマミツバチが入り口にゆっくりと近づき中に入ろうとするが、何かに阻まれて中に入れなかった。
何かとは物理魔法無効の結界だ。
プラス入場制限ありが付与されている。
首もふアマミツバチがすっ飛んできて俺の目の前で留まる。
どういうことだっ?説明しろやっ!とメンチを切っているだろうか?
安心安全というのをわかってもらうため首もふアマミツバチがテントに入る許可を出していなかった。
「貴女がこの中に入るのを許可します。」
言葉に出す必要がないが、首もふアマミツバチのためにわかりやすく言葉にした。
首もふアマミツバチは俺の顔の周りを飛び回る。
今度は大丈夫なのか?本当に大丈夫なのか?あぁん?と疑われているんだろうか?
「大丈夫ですよ。」
また入り口の布を捲る。
首もふアマミツバチが恐る恐るゆっくりと飛び進む。
結界に阻まれることなくテントの中に入っていった。
俺も中に入る。
続いて普通のアマミツバチも中に入ってきたことに気がついて、このアマミツバチが昨日のアマミツバチだったのだと分かった。
「この空間には私が入る許可を出さないと中に入ってこれません。許可しているのは貴女方だけです。」
「「……」」
「今、この中にいるのは私達だけです。」
「「……」」
「ほら?安心安全でしょう?あっ、空間はあとあと拡大縮小、追加、変更できます。草原ではなく森の中の方が良いのならそう変更します。」
「「……」」
「貴女方の過ごしやすい棲みかにします。好きな花も植えたりします。」
「「……」」
自身の周りに花が咲く『変種』した植物の種を植え花が咲くところまで成長させる。
アマミツバチ達の羽の音が大きくなったような感じがした。
興奮しているのかな?
「僕と契約して、安全安心な棲みかでのびのびと蜜を集めて、定期的に指定した花の蜜を集めてくれませんか?」
アマミツバチの二体が目の前でお尻を向けながら8字に飛ぶ。
これも、肯定か?
わ、わからない……
あっ
「契約してもいいなら○の形に二回、嫌なら×の形を二回繰り返して飛んでくれませんか?」
指先で○と×を宙で描いて首もふアマミツバチとノーマルアマミツバチに見せると、首もふアマミツバチと普通のアマミツバチが○の形を二回繰り返して飛んだ。
「ありがとうございます。では契約内容を確認しましょう。」
また○の形に飛んだ。
「私は貴女方に安全安心な棲みかを提供します。代わりにこちらが指定した花の蜜でアマミツを作ってもらって、定期的に私達に渡す。当然貴女方が生活に困らない活動と量をです。無理矢理集めろとは言いません。」
首もふアマミツバチが目の前でお尻を向けながら8字に飛ぶ。
好意的な感じ、なのかな?
「最後に特殊な契約魔法を結んでいただきます。」
『旅のオトモ』の契約魔法は普通の契約魔法と違っていくつかオプションがある。
それを説明した。
念話(電話みたいなもの。遠くにいても、口に出さなくても頭で思うことで相手に伝わる。)。
召喚送還。
GPSのような位置が双方ともにわかるようになる(オンオフできるらしい)。
お互いの能力の一部が相手に付与されお互いの能力が上昇する。
アマミツバチの二体が目の前でお尻を向けながら8字に飛んだ後に○を二回以上繰り返し飛んだ。
めっちゃテンションが上がっているように見えた。
旅のオトモの『コンパニォン』の詠唱を始める。
詠唱を見た時結婚式の誓いを思い浮かべた。
「人生という旅、君は旅のオトモ。楽しい嬉しい時はともに楽しみ喜び合おう、泣きたい悲しい時はともに慰め励まし合おう、良いことをした時は褒めよう、悪いことをした時は叱ってやろう、困難に遭遇した時はともに立ち向かおう、美味しいもの不味いものをともに食べよう、」
アマミツバチの二体が何度も○を画き飛んでいる。
美味しいものと言った時に高速で飛んでいた。
「様々な景色美しい風景をともに見よう、面白そうなことをともにやろう、健康を気遣い合おう、ともに長生きしよう、ともに旅を楽しもう。そんな旅のオトモになってくれるだろうか?」
アマミツバチの二体が何度も何度も○を画き飛んだ。
多くの魔力が身体から抜け目の前に集まり視認できるほどの魔力の塊が二つできる。
アマミツバチの目の前にも(自分のと比べると小さいが)魔力の塊ができ、俺の魔力はアマミツバチへ飛んでいき、アマミツバチの魔力は俺へ飛んできて身体に吸い込まれる。
契約精霊とは違った繋がりを感じた。
〈ラハートフ、ありがとう。〉
女の人の声が頭に聞こえた。
「もしかして、貴女ですか?」
首もふアマミツバチを見て聞いた。
〈そうです。ラハートフとオトモ契約して知能が上がりました。念話のことも知識として頭に入ってきました。〉
お互いの能力の一部が相手に付与されお互いの能力が上昇する。の効果なんだろうけど、会話できるほど知能が上がるとは、凄いな。
早速念話も使ってるし、凄いね。
でも、俺じゃなくもっと天才……エアルリーザ様とこの契約ができていたら、もっと頭の良いスーパー首もふアマミツバチが誕生したんだろうな……
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