第5話 初外出 2
肉屋の夫婦が落ち着いたら落ち着いたで、ありがとう祭りでまたぎゅっと抱き締められたり頭を撫でられたり額や頬にキスを貰ったり、最後はおっちゃんに作業場まで運ばれ、猪っぽい動物の解体を見せられた。
いきなりで心の準備もできていないところにグロいし血生臭ささに嘔吐して泣きまくって、いつの間にか寝ていた。
目を覚ましたら、知らない部屋で若干パニックになりそうなところを肉屋の奥さんに抱き締められ大きなお胸様の包容力、母性力に安心して落ち着いた。
おっちゃんに謝られ、すっごい悲しそうな表情で「……嫌いにならないでくれ。できたら、また来てくれ。」と言われた。
奥さんも悲しそうな表情で見ていたから、順番に抱きついて「またきましゅ。」と言った(噛んだのスルーしてくれた)。
好意的な気持ちをいっぱい込めて接してくる二人が嬉しそうに笑顔になるのを見て、心が温まった。
お詫びに寝ている間におっちゃんが解体をした猪っぽい動物の肉の一部を貰った。
肉の塊ブロックだと美味しそうに見えるのが不思議だ。
頭とか手足、内臓、血がないからかなとか思い、解体時のことを思い出し若干気持ち悪くなって、頭を振って記憶を祓う。
「息子に貴重な経験をありがとうな。」
「いや、いきなりしてすまなかった。」
「構わない。また教えてやってくれ。」
「あぁ。」
なにやらまた解体を見せられることが決まったようだ。
……まぁ、できないよりはできた方がいいからな。
うっ、でもあの臭いが、うっ……
徐々に慣れると、いいなぁ……
おっちゃんにぼすぼすと頭を叩かれた。
もっと力を抜いて、ぽんぽんと優しく叩いてくれと内心思った。
奥さんに優しく頭を撫でられた後、父さんに抱っこされ、二人に手を振り「またね。」と言い別れた。
肉屋の夫婦で村にいる人達との顔合わせが終わり、次に父さんに抱っこされつれてこられたのは畑だった。
そこで新しい魔法、プチアースを見せてもらった。
父さんが使ったプチアースは土を盛り上げ畝を作った後、種を植えるため少し凹ませた。
それを見て、衛生面とかばい菌だとかを思い出し、見せてもらったプチアースで少しは改善できるんじゃないかと思った。
畑に向かっている時、なんで三歳で初外出なのか聞くと、三歳までに亡くなる子が多くいるからと父さんが答えた。
それを聞いて、少し前に父さん母さんが「元気に育ってくれてよかった。」「あそこの子は亡くなってしまった。」とか話しているのを魔力切れの気絶から覚めた時に聞いたことを思い出し、肉屋の夫婦の俺へのあの接し方になんとなく察してしまった。
道中亡くなるのは衛生面に問題があるからだと思ったんだ。
なぜそう思ったかは父さんにちぎってもらったパンをスープに浸し食べさせてもらった時、高確率で腹痛が起こり、ゆるゆるになったことだ。
これが問題の一つだ。
何でだ?と思い、高確率の父さんを観察した。
外出後汚れがはっきりとわかるときだけ井戸か川かプチウォーターの水が溜めてある大きな陶器の水を柄杓で掬って手を軽く洗って比較的綺麗な布(見た目)で水分を取っていた。
これじゃないか?と思ったし、プチクリーンを使えばいいじゃんと思った。
外出をしたら、うがい手荒いが当たり前の前世。
プチクリーンという素晴らしい洗浄の魔法があれば地球、日本にも負けない衛生面を誇りそうなんだけど、お尻の汚れとよっぽどの汚れにしか使わんの……
不思議に思った。
父さんよりマシだったが母さんも似たような感じだった。
ということは他の家庭も同じだと思われる。
あと風呂がなく、身体は陶器の水で濡らした布で拭いていた。
俺も身体が自由に動けない時は拭かれていた。
父さんを観察した日からは全身にプチクリーンを使うようになった。
あと布に服に水に、父さん母さんにも使うようになった。
だって見た目綺麗な布に、嫌な臭いがする布があったから……
そんなものが一枚でもあると見た目が綺麗な布だとしても同じかもしれないと思い、嫌な臭いが鼻をかすめる前にプチクリーンをするのは当然だ。
あの臭いって菌が増殖しているからなんだって前世で聞いたことがあった。
これが問題の二つ目である。
ばい菌を洗浄できず、ばい菌たっぷりな手や布で赤ちゃんを世話していたら、免疫力の弱い赤ちゃんなんて病気になってそのまま死んでしまうのは必然である。
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