第31話 ダンジョン清掃④
シェイク達はダンジョン管理者の前に並んだ。
ダンジョン管理者はカウンターの中で、うんざり顔をしている。
「今日はやることが多いの。実習に行くならちゃっちゃと済ませてちょうだい」
手元の台帳と水晶球にチラチラ目をやりながら、彼女はそう言った。
シェイクは自分達3人の名前を告げる。
それは、本日の課題であるダンジョン清掃に挑むパーティとして登録された。
「……あなた達の星のアベレージは3を超えているから、実習履行に問題はないわね」
「ダンジョン内のゴミ拾いってことだが、どんなゴミを拾ってくればいいんだ?」
「なんでも、よ。魔物の骨や死骸、折れた剣やひしゃげた盾、通路上に崩れ落ちた瓦礫の山。落ちている物はなんでも。それをここまで持ち帰れば、得点になる。簡単でしょ?」
「ん? もしかして、ゴミをたくさん拾えば、それだけ点が多くなるとかあるの?」
ココアが横から聞いてきた。
「そうね。ただ、持ち帰るゴミの種類によって点数は変わるわ。石ころや残飯なんかは安全に拾えるけど、点数は低いでしょうね。一袋にいっぱい入れて5点とか10点くらい。落ちている宝箱をゴミとして回収できたら、中身によっては200点を超えるかも。でも、魔物の死骸なんかも点数が高くなるわ。特に、倒されたばかりの新鮮な死骸なんかは、ね」
「……つまり、俺達の手で新たにゴミを作り出して回収すれば高得点になる、と?」
「まあ、ゴミをわざわざ作り出す、っていうと語弊があるけれど、要は魔物討伐した方が点は高いわよ、ってこと」
と、プリンが目を輝かせた。
「あっ、あっ、シェイク、じゃ、じゃあさ、じゃあさ! ダンジョンの壁とか扉とか壊してゴミにして回収したらどう、かな? 点数は低いけど、安全に無限にゴミを生み出せるよ」
「ダンジョン管理者として、ダンジョンへの破壊行為は認められないわね。ダンジョン内での行動は監視球で観察されているから、実際やったら弁償してもらうけど?」
「あっ……え、えへ、じょ、冗談ですふふへ」
プリンは曖昧に笑って、俯いた。
と、ダンジョン管理者は真剣な顔になる。
「……あと、ダンジョンをわざと壊す以外の禁止事項として、今日は第2階層以降jには決して侵入しないこと。清掃の範囲は第1階層のみ、よ。その点に注意して」
「下の階の方がゴミいっぱいありそうなのにねえ」
「第2階層より下は、教官達が潜っているんだろう? 俺達が第2階層に行けないのはそれとなにか関係があるのか?」
シェイクの問いに、ダンジョン管理者は一旦口を閉ざす。
が、首を振って再び話し出した。
「君達はある意味当事者だから教えといてあげる。昨日の第2階層に出現した魔物が強力過ぎるのよ」
「……リッチのことか?」
「そうね。あれは第20階層くらいで見かけることがあるくらいで、普通そんな浅い階にはわざわざやってこないの。でも、昨日は違った。あんなのがいたら、訓練にならないわ。だから、今日は教官達でそういうイレギュラーな魔物をあらかじめ討伐しておこうってわけ」
「安全な訓練のために、か」
「そう。で、その安全が確認できないから、第2階層より下に訓練生は立ち入り禁止、わかった? ……さ、登録は済んだから、もう行っていいわよ。私はあなた達のの面倒を見るだけじゃなく、監視球で教官達のサポートもしなくちゃいけないんだから」
そう促されて、シェイク達はダンジョン入り口へと向かいだす。
その背中に、ダンジョン管理者の声が重なる。
「次の人達、どうぞ。もう組む相手が決まったならこっちへ来て、登録してちょうだい」
「……本当、忙しそうだね」
プリンがそう呟く。
と、その呟きに被せるように固い声がかけられた。
「なにが忙しそうだと? やっと登録し終わったのか。こっちはさっきから待ち構えていたんだぞ」
ずい、とシェイク達の前に出てきたのは、重装鎧を身に着けた騎士。
その横には薄っぺらい笑顔を張り付けた僧侶と黙然と立つ魔術使がいた。
昨日見た面々。
星4つ訓練生のスチール達だ。
「待ち構えていただと?」
「ああ、逃げられないようにな。俺達は貴様らに決闘を申し込む。デスゲームだ」
スチールの目が鈍くぎらついた。
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