第26話 出会った少女①
怖い女子訓練生達に囲まれ、目線はオドオド、床ばかり見ていたプリン。
だが、突然呼びかけてきたその声に顔を上げる。
声の主、僧侶服姿の浅黒い女の子が見えた。
訓練生の1人だ。
「あ? なんだてめえ? なに見てんだ? ああ?」
「なんだか骨を折るとかなんとか物騒な話が聞こえてきたから気になったんだけど……もう一度聞くわ。あなた達、なにしてるの?」
獣じみた女子訓練生に凄まれても、その僧侶服姿の訓練生は怯む様子がない。
怖い訓練生達は顔を見合わせた。
1人が口を開く。
「……そんな話してねーし。てか、そもそもあんたには関係ねーでしょ。失せな」
「わたし、行ってもいいの? なら、今この場でなにが起きているか、あなた達がなんと言って脅していたか、教官達に教えに行くことになるけど?」
「チクり屋かよ! うっざ」
「……あなた、なにか勘違いしてなあい? わたし達、仲良しなのよ? ねーえ、プリンちゃん?」
可愛い女子訓練生に微笑みかけられて、プリンは頬を引くつかせた。
「へっ!? あっ、あっは、はい……?」
「ちょっとふざけてただけよ、ねえ?」
微笑みの中に込められた圧。
念押しするような眼差し。
それらを受けて、プリンはぱっと表情を明るくする。
「あっ! そ、そうっ、だったんですか? は、はは、びっくり、えへへ、しました。も、もう、うふ、ふふふ、指を本当に折られるのかと、えへ」
「……ちっ、言うなカスが……」
「へえ? プリンちゃん、指を折るって言われたの?」
「はい。へへ、で、でも、冗談、だったんですね。うっふ、本気にしてぼく、すっかり騙されちゃいました。あは、は。あ、シェイクのことも、冗談……ですよね? へへ……」
僧侶服姿の女の子は見透かしたように半笑い。
「へええ? これって明らかな脅迫だよね? いいのかな~?」
「そんなこと言ってなーい。知らなーい。さ、みんな、授業に行きましょう」
可愛い女子訓練生が素知らぬ顔でそう合図する。
と、彼女の仲間達は舌打ちや悪態を漏らしつつ、その場から歩み去っていった。
可愛い女子訓練生もつんと顎を上げ、プリンの横を過ぎていった。その際、
「……覚えてろよ……」
そんなドスの利いた声で囁かれて、プリンは、ひぇ、となる。
「……シェイク君は絶対うちの方が相応しいんだからな……!」
「ひへ、あの、ななな、なん、なん、んひ、です?」
そんなプリンの問いかけに応えるものは誰もなく、プリンを囲んでいた訓練生達はその場からいなくなった。
立ち尽くすプリン。
「……えっと……だいじょぶ?」
ただ1人残っていた僧侶服姿の訓練生が首を傾げてくる。
プリンは眉根を寄せた困り顔で笑う。
「えっ、へへ、へ……あの。ありがとう、ございます。ひへっ、ご親切に、ど、どうも……」
「わたし、ココア・ソルトっていうの。星3つ訓練生よ。あなた、プリン・コールドサマーだよね? 星1つ訓練生の?」
「は、はひ、すみません……」
「へ? どうして謝るの?」
ココアは目を丸くして、それから吹き出した。
「変なの!」
「へ、えへ、へへへ、変、ですよね、す、すません……」
「またあ! プリンちゃんっていつもそんななの?」
ココアは首を傾げ、プリンの目を覗き込むように、問いかけてくる。
曇りのないココアの目。
面白いものを見つけたと言わんばかりに笑う口。
プリンは、その笑いにつられて、えっへへ、へ……と消えそうな笑いを漏らした。
「そうだ! それより、プリンちゃんって昨日、早速実習に行ったんだよね?」
「えっ? は、はい? そう、ですけど……え、えへ、なんにもできなかったんですけど、ね」
「そんなことないよ! だって無事に帰ってきてるし……うん、決めた!」
「な、なにを?」
「プリンちゃん、わたしと一緒になってくれない? ダンジョン実習、一緒にやろうよ!」
ココアは満面の笑みで誘ってきた。
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