第3話 星5つの者達①

 プリンは気を取り直してシェイクを見上げる。


「それより、さすがシェイクだね」

「なにが?」

「なにって……星5つだったでしょ? へへ……訓練生トップじゃない」

「現時点では、ね」

「現時点では? 星5のシェイクがこの先、誰かに抜かされることなんてあるの?」

「この最初の試練では星は最高でも5までしか与えられないって話だったろ。でも、この後の実習で課題をこなしていけば、星はいくらでも増やせる」

「そっかぁ……なら、シェイクはどこまで星を増やせるんだろうね? シェイクなら10とか20とか取れそう……! そしたら訓練生代表に選ばれちゃうかも!? うふ、ふへへ……」


 頼りになる幼馴染の勇姿を想像して、プリンはにへらと頬を緩める。

 ここオーディン冒険者訓練所を卒業した冒険者達の中には白金級冒険者や各国から爵位を授かったような英雄もいる。

 その第17期訓練生代表ともなれば冒険者の経歴として箔がつき、高難度の依頼を受けられるようになるだろう。

 いきなりドラゴン退治とか魔王軍への主戦力として召集されることだってあるかもしれない。

 しかもそれだけではない。

 訓練生代表に選ばれた者には、表彰の品として、その者が持つに相応しいマジックアイテムが贈られるという。

 シェイクなら得意な武器は片手剣だ。

 高価で強力な魔剣を手にしたシェイクが炎を吹くドラゴンに切りかかる姿。

 そんな未来を思い浮かべるとプリンはなんだか誇らしい。

 そんな風に幸せそうなプリンを前にして、シェイクが腕を組む。


「いや、だから、プリンもこれからいくらでも星は増やせるから心配するなっていうことを言いたかったんだけど……」

「あ、ぼくのこと気にしてくれてたの? ふへっ」


 プリンは息が漏れるように笑う。

 そこへ見下した声が割って入った。


「なにがおかしいんだい? 星1つ訓練生が笑っている場合なのかな?」

「へ、ふへ? あ、あなたは、えっと……」

「……確か魔術使の名門の出でセンブリ……」

「そうだ、シェイク君。君と同じ星5つ訓練生のセンブリだ。以後よろしく頼むよ。少なくとも、この訓練所を卒業するまでは」


 首を捻るプリンと眉を顰めるシェイクの前で、優男の魔術使が一礼して見せた。


「……ああ! 試練の時、火球を使って魔物を横取りしていた人だ!」

「それで、そのセンブリ訓練生がなにか用かい?」

「星5つ訓練生のセンブリだ。星の数を忘れないでもらおう」

「……わかった、星5つ訓練生。……それで?」

「なに、明日からの実習について、君を僕のパーティに入れてあげたくてね」


 センブリは薄く笑う。


「……いや、俺は星5つ訓練生のパーティに入る気はないが……というか、どうして俺を? 知り合いでもない俺になぜ声をかける? 前にどこかで会ったか?」

「この訓練所で初対面だよ、シェイク君。だが、君は私と組むべきだ」


 シェイクは肩を竦めた。


「どういう理屈だ」

「優れた冒険者は優れた仲間と共にいるべきだからだ。レベルの低い仲間がいるとパーティ全体が危険にさらされる。先程の教官の意見に、私は賛成だね。冒険者としての適性に欠く者は早く出て行って欲しいものだ」


 じろり、とセンブリはプリンを見下ろす。

 そして、非難がましくシェイクに問いかけた。


「で、なぜ君はこんな役立たずと話をしているんだ?」

「え……あ、えへ、へへ……ぼく、おじゃま……だよね?」


 プリンは2人の星5つ訓練生を見比べ、呟く。

 それ以上、言葉が出せない。

 だから身を竦め、愛想笑いを浮かべながらその場を去ろうとした。

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