第4話 星5つの者達②
「待った」
その場から姿を消そうとするプリンにシェイクから声がかかる。
「これから大事な話をするからプリンもここに残って聞いてほしい」
「大事な話?」
「今後、俺が誰と組むかって話。星5つ訓練生のセンブリ、お前は
俺をパーティに入れてくれるって言うけど……」
シェイクは優男を値踏みするようにじろじろ見まわした。
見られた方のセンブリはせせら笑う。
「まさか、断る気ではないだろうな?」
「いいや、いいぜ。仲間になってやる」
シェイクの答えに、プリンは唇を噛む。
さらに、……そりゃそうだよね、と口の中でもごもご。
訓練所で高い評価を得るには、高難度の課題をこなさなけれならない。
高難度課題の中には、1つクリアしただけで星が2つも3つももらえるものもある。
そして、そんな高難度の課題では挑むのにも無条件で、とはいかない。
パーティ全体での星数平均値が最低でも4以上必要だ。
シェイクが訓練所代表を目指すのなら、高い評価を受けている者同士集まって、高難度課題を多くクリアした方がいい。
センブリは見下した目。
「ありがたく思うといい。君のような田舎者を僕のパーティの末席に加えてやるのだから」
「ただし、条件がある」
「条件? 君は条件をつけられる立場だと思っているのか? まずは仲間に選んでくださってありがとうございます、と頭を下げるところからだろう?」
「それは俺の条件をお前が受け入れたら考えてやるよ。俺をパーティに加えたいなら、一緒にプリンも入れてもらおう。それが最低限の条件だ」
「ぅえ?」
突然、名前を出されて、プリンは間の抜けた声を上げてしまった。
センブリの目つきが鋭くなる。まったく面白くなさそうな口ぶり。
「面白いことを言う。その役立たずを私のパーティに加えろ、と? 星1つの無能を? 私はパーティを率いる者の責任として、適性のない者をパーティに混ぜてパーティ全体を危険にさらすつもりはない」
「ぼ、ぼくだってそんな……高評価の人達ばかりのパーティになんか、え、えへ……入れないよ……」
「プリンはセンブリのパーティに入りたくはないんだな?」
「え、あ、うん……だって、怖そうだし、うるさそう……」
「そうか、そうだな」
「う、うん。なんかギスギスして窮屈だろうなって……理屈並べて店員さんとかよく怒鳴ってそうだし……へへ」
「よし。プリンが望まないなら、この話は無しだ」
「なんだと?」
「というわけで星5つ訓練生、やっぱり答えはノーになった。もう少しプリンに好印象を与える人間性を身に着けてから話しをしてくれ」
センブリは口元を歪める。
「……君達が私を評価するのか? 私に、君達のお眼鏡にかなうように努力しろとでも? 思い上がりも甚だしい……。私が誘ってやっているというのに……!」
「悪いな」
「……大体、その役立たずはなにも関係がない。私が選んでやったのはシェイク君だけだ。なのに、なぜ、その役立たずを条件に加えた?」
「それは俺がプリンと一緒でないと力が発揮できないからだ」
「意味がわからない。なんの貢献もできない役立たずが大事な仲間だと? ……どうやら、君とその役立たずは同じ地方出身の田舎者同士のようだな。同郷の者だから、古い知り合いだから、実力とは関係なく同情で弱者と手を組んであげているというわけか?」
「……お前にはわからないさ」
「実に感情的で甘い判断だ。私は君を買いかぶっていた」
センブリは頭を振って、小馬鹿にしたような溜息を吐く。
「……そんなに彼女が大事な仲間なら、その仲間を失ったら君はどうなるのだろうな? 大切な仲間を失って弱体化するのか、未練を切り捨てて私のパーティに参加できるようになるのか」
「なに?」
「知っているかい? ここの訓練生はよく事故で死亡する」
その言葉に続くのは、くぐもり声での詠唱。
「……ふぇ?」
プリンは顔を上げて、目を見張る。
その顔が迫りくる火球の炎で照らされた。
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