第37話 ダンジョン清掃 第1階層④
「……やっぱ、あいつらやべーな……あのでかさのスライム、しかも不意打ちしてきたのにかーるくノしちまいやがった……」
「ヤバいのはシェイク君1人だけ。他はザコザコザ~コ」
「でも、どうすんだよ? うちら、フリージアが欠けて3人しかいねえんだぜ? こんなんで勝てんのかって、なあ、アーちゃん?」
シェイク達を遠巻きに見つめる3対の目。
宝箱探し勝負に後から乗っかってきた女子訓練生3人組だ。
3人の中で一番かわいい訓練生が、人差し指を自分の顎先に当てて、んー? と口を尖らせてみせた。
「そうねえ? そりゃあ直接
「おいっ、冗談じゃねえぞ!? アーちゃんが勝手に勝負仕掛けたんだからな!? 負けたらあたしらなんでも好きなこと命令されちまうんだぜ!? なにやらされるか……」
獣じみた女子訓練生が犬歯をむき出しにして唸った。
アーちゃんと呼ばれた女子訓練生が小さく鼻で笑う。
「……あんたは心配する必要ないじゃん……」
「あ? なんか言ったか? お?」
「まー、待てよ。アーちゃんは勝ち目もねーのに勝負仕掛けたりしねー。あたしらとは違げーんだ。そーだろ、アーちゃん?」
柄の悪い女子訓練生が間に入る。
アーちゃんは悪戯っぽく笑った。
「そうよ? だって、これは誰が強いかの勝負じゃない。誰が宝箱を見つけるかの勝負。いくら剣の腕が立つからってそれだけじゃ勝てない。その点、こっちには鼻の利くのが2人もいるんだもん。わたしだって探索系の魔法も使えるし。わたし達の方が絶対有利!」
「……まー、あっちには盗賊系のメンバーがいねーみてーだしな。もう一方のスチールだっけ? あいつらも騎士に僧侶に魔術使でお宝探しには向いてねー」
「逆にあたし達はフリージアが潰された所為で殴り合いじゃしょぼくなっちまってるけどな」
「だからこそよ! だからこそ、シェイク君はわたし達のパーティに入るべきなの! シェイク君が仲間になれば、わたし達無敵になれるわ。わたし達が勝って、シェイク君をいただく……!」
柄の悪い訓練生が頭を掻いた。
「だがよー。あたし達で本当に宝箱見つけ出せんのか? こう言っちゃなんだけど、訓練生のほとんどがゴミ拾いに来てるわけじゃん? そいつらの内の誰かがもうとっくに宝箱を見つけて回収してるかもしれねー。第1階層には1個しか宝箱は設置されてねーって聞いたぜ? だったら結構厳しくね?」
「そうね。第1階層の宝箱を手に入れるんだったら、他の訓練生達とも競争しなくちゃいけないから難しいかも?」
「おい! 話が違うじゃねえか! 勝てるんじゃなかったのかよ!? あたしはいやだかんな!? えっちなのは!」
「……しつけえな、ねえっつってんだろ……」
「ああ!? なにボソボソ言ってんだてめえ!?」
「なんでもなーい。それより聞いて聞いて? わたしが言ってるのは、第1階層の宝箱を手に入れるのは難しいかも? ってこと。じゃあさ? 第1階層以外から宝箱持ってきちゃえばよくな~い?」
「おい、それってよー……」
「第2階層より下に潜って宝箱見つけちゃおうよ?」
アーちゃんはとっておきの笑顔で言った。
「今日とか第2階層より下って手付かずでしょ? 宝箱だって残ってるよ」
「そりゃそーだろ。第2階層以下は立ち入り禁止なんだから。いーのかよ」
「ぱっと行ってぱっと取ってくれば問題ないよ」
「あたしらだけで第2階層行って魔物に勝てんのか?」
「そこら辺の浅い階なら大した魔物出てこないはずでしょ? 第5階層より下へ行くわけじゃなし」
うーん……どうする? と、顔を見合わす仲間達に向かって、アーちゃんは言う。
「ほら、シェイク君たちが移動するよ? このまま様子を窺ってても100パーセント勝ちはないけど? シェイク君たちが第1階層を無駄に探し回ってる間に、わたし達は勝ちに行こう?」
◆
第2階層へと続く階段のある大きな部屋。
そこにアーちゃん達3人の訓練生達の姿があった。
「……おい、なんか落とし戸みたいなので封じられてんぞ? 話が違うじゃねえか! これじゃ第2階層へいけねえ!」
「んー? 教官達が下へ降りるとき、封印したみたいね。魔法的に封じられてるわ」
「それじゃーしょーがねーな。残念だけど引き返そーぜ」
「待って待って? これ、外せばいいだけよ? 第1階層側からなら簡単に解呪できるみたい。第2階層から戻ってくるときは特定の呪文を唱えないと開けられないみたいだけど」
「……まさか、アーちゃん、封印を破る気じゃねーだろーな?」
「え? なんで? 破らないの?」
「さすがにやべーだろ。教官に見つかったら、怒られるどころじゃ済まねーんじゃねーの?」
「大丈夫。第1階層側からなら簡単に封印し直すことができるみたいだから。解呪して、さっと宝箱を回収してきて、また封印し直せば元通り。バレないバレない」
「……そうは言ってもよー……」
「……もう解呪しちゃったけど?」
アーちゃんはこともなげに言った。
「さ、もう開いちゃったんだし? 行こ?」
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