第24話 星6つになった男②
シェイクは教官を真正面から睨む。
「だから、おかしな話だと言っている。俺は1人でダンジョンに潜ったわけじゃない。プリンもいた。魔物討伐から得られるポイントは、パーティの人数で割って得られるものじゃないのか? なぜ、俺1人にポイントがまとめて加算されている?」
「プリン訓練生? 彼女が魔物討伐にどんな功績があったというんだ? おい、プリン訓練生!」
教官から名指しされ、プリンの心臓が跳ね上がる。
「ひゃいっ!?」
「貴様は昨日、一体でも魔物を倒したか?」
「え、あの」
「我々はダンジョン内での訓練生の各行動をチェックしている。貴様はなにもやっていない。ただシェイク訓練生の後ろに隠れていただけ。魔法を放てば致命的失敗。そうだな?」
「は、はい、へ、えへ、す、すみませ……」
「そんなただの同行者、いや、お客さんに評価ポイントが与えられるわけがない。だから、シェイク訓練生が1人で全ての魔物を倒したようにポイントは加算されている。結果、プリン訓練士が星1つのままなのは実に妥当だ。戦いもせず仲間の影に隠れている、恥知らずの臆病者にはお似合いの結果だな!」
「ふ、へ、すみま、へへ……」
俯いてもごもごしてしまうプリンに、蔑んだ目を投げつける教官。
が、それで気が晴れたのか。
教官は大声で訓練生達に解散を告げ、午前の座学へ向かうよう指示した。
そんな教官に向かって、シェイクは口の中で呟く。
『節穴め……』
と。
それから、立ち尽くすプリンに声をかけようとしたところで、囲まれた。
「星6つおめでとう、シェイク君!」
「やっぱりすごいんだな、お前!」
祝福の言葉をかけてくる訓練生達に面食らうシェイク。
それどころじゃない、とばかりにシェイクはプリンの方を見る。
誰かがプリンに声をかけているようだ。
そんな光景を遮って目の前に入り込んできたのは、満面の笑みを浮かべている太めの魔術使。
確か、カードとかいう名の訓練生だ。
「ねえ、やっぱり僕らのパーティに協力してくれないかな? 昨日はフラれちゃったけど、でも、あのプリンって子より僕達の方が絶対役に立ってみせるよ!」
「! ……俺はお前とは組まないって言った」
「そ、そんなこと言わずにさあ」
「へへ、お前のとこみたいなへっぽこパーティには入りたくないってさ、カード! それより、俺らと組まない? 色々特典つくぜ?」
「だめよ! シェイク君、わたし達と一緒に実習行ってくれない? 女の子ばっかりで誰か1人、頼りになる男の子が必要なの~」
「メス豚が……なあ、シェイク。お前を男と見込んで、俺の背中を預けたい。男同士、2人っきりでダンジョンに……」
「誰だ、お前ら。いや、そんな話はどうでもいい。どいてくれ」
シェイクは訓練生達を掻き分けるようにして、ようやく囲みから抜け出た。
「おい、プリン、あんな教官の言うこと気に……」
そう話しかけながらも、シェイクの声は途中で消える。
プリンが消えていた。
シェイクは辺りを見回す。
見当たらない。
『……座学を受けるために、もう訓練所の中に入ったのか? ……1人で? 俺がついていっていないのに?』
シェイクは首を振った。
『教官に罵られて落ち込んでるかと思ったけど、心配し過ぎか……そうだよな』
その時、シェイクの目の前を、男女の訓練生が腕を組みながら歩いていった。
いちゃいちゃと、実習だけでなくプライベートでも組んでいるようだ。
その仲良しそうに一緒にいる姿に、なぜかシェイクは胸騒ぎを感じる。
『……プリンの奴……さっき誰かと一緒じゃなかったか……?』
唐突な想像に、俄然雲行きが怪しくなってきた。
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