第20話 実習の終わり①

 シェイクはスチール達に冷たい目を向けながら、プリンを促した。


「行こう、プリン。こいつらにはまだやるべき課題が残ってる。でも、課題を果たした俺達はもうこのダンジョンにいる必要はない」

「あ、う、うん、そう、だね。へへ、あの、じゃ、じゃあ、ひ、ひひ、ヒドラ退治頑張ってくだ、さい。えへへ」

「このおかっぱのチビ、いちいち煽ってきやがる……!」

「違っ! 違うのに~!」


 そして、しばらくダンジョン内に響く足音。


「……おい、なんで俺達のあとをついてくる?」

「……別に、ついて行ってるわけじゃない。たまたま行き先が同じだけだ」

「いやいやいやいや、実はヒドラから逃げる際に道に迷ってしまっていまして、ええ。状態も全滅一歩手前ですし、このままダンジョンを出ようと思うのですが、連れてってもらえますかね?」

「おい、グッドマン! 余計なことペラペラ喋るな!?」

「……そりゃまた随分調子のいい話じゃないか? 俺達にダンジョンの外まで連れて行って欲しいなら、俺達に対する詫びの1つもあるべきじゃないか? それでも俺はお前達のやったことを許さないけどな」

「ぐぐっ! だ、誰がお前らなんかに……!」

「シェイク、た、助けてあげようよ。こ、困ってるみたいだし……えへへ、ぼ、冒険者同士困ってるときは、お、お互い様って、ね? ダンジョンを出るくらい簡単、でしょ?」

「……その簡単なことができない俺達は無能だって言いたいわけかっ!」

「ひぎぃっ違うますぅっ!」


 ここでスチールが発狂した。


「ああくそっ! こんな陰険な奴らに借り作るなんて死んでも嫌だ! だからまず謝る! すまなかったなっ! お前達を馬鹿にして囮にしたこと本当に申し訳なかったっ! おら、土下座! ……そして、俺達をダンジョンの外まで連れ出してくれるよう依頼する! 報酬を払う! 俺達は雇い主だ! 金貨で払う! お前らにこれまでしたことの詫びもそれに上乗せする! で、そうしてダンジョンの外に出て報酬を払ったらもう貸し借りなしだ! いいなっ!」

「そんなキレ気味の謝罪があるか! おい、プリン! こんな奴等置いてさっさと出よう! プリンだって嫌だろ、こんな奴等?」

「まあまあまあまあ、お二方とも落ち着いて落ち着いて……」

「うるさい、お前らは野垂れ死にでもしてろ! それが報いだ!」

「貴様……っ! 俺が謝ってやるって言ってるのに!」

「あわ、わぁ……そ、その、へひっ」


 確かに、プリンはここまでスチール達に見捨てられたり侮辱されてきている。

 いい感情を抱くいわれはない。

 だが、だからといってプリンには彼等を見捨てることもできなかった。


「も、もう、それで、い、いいんじゃないっ、かな?」

「……金を払ってもらって、それで貸し借りなしにするって? プリン、それでいいのか? ……まあ、プリンがそうしたいなら、いいけど……」

「と、いうことで、へへ、よ、よかったですね? ふふ、み、みんな外に出られますよ?」


 プリンが困ったような笑顔をスチールに向ける。

 スチールはそのへらっとした笑いに、


「……なんか腹立つんだよなあ! お前!」

「な、なんでぇ!?」


 結局、プリン達は彼等を引き連れてダンジョンから脱出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る