第33話 ダンジョン清掃⑥
「プリン、勝手にそんな……」
「だ、だって宝探しだよ? しかもみんなで早い者勝ちの競争だよ? 楽しそう! 冒険者っぽい!」
諫めるシェイクに食い気味の言い訳を始めるプリン。
それを見て、ココアが吹き出す。
「あはは、本当にプリンちゃんは雰囲気に弱いね!」
「えっ、えっ、ぼく、ふ、雰囲気?」
「自分じゃわかんないのがまたかわいいなあ。物語やお話の中にあるような……うーん、冒険っぽい雰囲気。冒険譚とか、好きでしょ?」
「うん、旅の吟遊詩人からそういうお話聞いて、へ、えへ。ぼくもかっこいいことやりたいなあって」
「ねー? やっぱりプリンちゃん、面白いよ」
「へ? え、ふ、ふふ、あ、ありがとう?」
「……なにが面白いんだ」
プリンとココアのやり取りにシェイクがぼそり。
それを聞いてココアが悪戯そうに笑う。
「あれ? ご機嫌よくない? もしかしてわたしとプリンちゃんが仲良くしてるの、イライラしちゃう?」
「……そんなことはないが?」
「ふふっ、でもシェイク君もわたしと同じ気持ちじゃないかな? ずっとそのままのプリンちゃんでいてほしいって気持ち……! 得にもならないことを、かっこよさそうだから、自分もやったら楽しそうだからで引き受けちゃうプリンちゃん……至宝だよ、これは」
「なんだそれは?」
「ま、プリンちゃんが楽しそうなのが一番ってこと。ってわけで! わたしもこの人達と宝探しで勝負するのはいいと思うな」
「ココアまで……」
シェイクは頭を抱えたくなる。
が、プリンがそれをやりたいと望むなら……と気持ちを切り替えた。
プリンの選んだ道を、俺は全力で支える。
……決して一人にはさせないから。
「……わかった。いいだろう。俺もその話に乗ってやる」
シェイクの言葉に、スチールがニヤリと笑う。
「よーし、そうこなくちゃな。第1階層に設置されてる宝箱は1つだけのはずだ。それをここまで持ってきた方が勝ち、でいいな?」
「宝箱ごと持ってくるのかよ」
「一応、課題はダンジョン内のごみ拾いだからな。宝箱もダンジョン内に落ちてるゴミ扱いだ。なのにそれを回収せずに中身だけ持ち帰ったら、俺達が課題のゴミ拾いもやらずに遊んでたみたいに思われるだろ」
そんな話を全然聞いていないプリンはシェイクにキラキラした目を向ける。
「宝箱の中身ってなんだと思う、シェイク?」
「さあな。ダンジョン管理者の置いた訓練用の宝箱だろ? 中身なんて木の剣か薬草か……ゴミみたいなもんじゃないのか」
と、シェイク達の後方から声がかかった。
「その話、わたし達も混ぜてくれない?」
「……ひぇ……」
プリンが硬直する。
シェイクが振り向くと、そこには女子訓練生が3人立っていた。
その内の一番かわいい訓練生が、プリンに微笑む。
「プリンちゃん、元気? 今朝はごめんね? もっと、もーっと、いっぱいお話したかったんだけど」
「あなた達、まだプリンちゃんに用なの?」
ココアが腕を組んで彼女らに向き合った。
「あら? わたし達、プリンちゃんのお友達だもの。お話したりお願いしたりしてもいいでしょ? ねーえ? プリンちゃん?」
「あっ、は、はひっ、そ、その……」
「というわけで、お願い。わたし達もその宝探しゲーム? それ一緒にやらせてくれないかな?」
「おい、なんだお前ら? そっちの陰険な煽りチビと友達だかなんだかしらんが、横から口を出すんじゃない」
スチールの険しい声に、かわいい女子訓練生は甘えた声を出す。
「ええ~? いいじゃない、スチール君。わたし達も混ぜて? 勝ったらなんでも言うこと聞いてもらえるんでしょ? わたし達、シェイク君をうちのパーティにもらいたいんだよね」
「……くそ、こいつが星6つになったから狙ってやがるのか。強い奴をパーティに入れて強化……なんでこいつばっかり」
「スチール様、そうお気を落とさずに。ええと、確か……星3つのアース訓練生……でしたか? 皆さん方は自分達が負けた時のことをご存じで? 大変なリスクがあるのですよ、ええ。悪いことは言いません。お引き取りください」
グッドマンがスチールの後を継いで話し出した。
「負けた時? そんなの、わたし達が負けたら、わたし達のこと好きにしていいよ?」
「いいでしょう! グッド!」
グッドマンはアース星3つ訓練生他2名の女子訓練生達の参加を認めた。
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