第88話 「大飢饉の余波」

カナンの地域に住むアブラハ族も飢饉による食糧不足が深刻な状況にあった。

多くの部落は、食糧を受ける条件として、セツラ王国の庇護を受け、幾つかのルールが課せられた。それは彼等が住む農地を全てセツラ王国の支配下に置く事であり、セツラ王国の民となり、労働力としてリエラ商会から割り当てられた責務をこなす事となった。

 ギルデロイ王都の貴族達は、多くの資産を持っていた為、食糧を購入する事が出来た。最初は、平均的な価格で取引がなされたが、2年目以降作物の価格が高騰し、その結果多くの貴族の資産がセツラ王国に流れる事になった。やがて彼等の財産も底をついた時、屋敷や土地も全て献上される事になり、飢饉7年目には、貴族の身分が剥奪され、一般市民として、セツラ王国の市民となった。



「父上!我らアブラハ族が住むカナンの地域においても日照りが厳しく、井戸も枯れ、近隣の川や湖も枯れ果て、もはや作物を育てる為の水を供給する事は困難!このままでは、作物を食べ尽くし、一族は滅びてしまうでしょう。」


「我々アブラハ一族は、起源の主の加護を受ける選ばれた民である!決して滅びる事があってはならない!!これより他の部落民と同じように、セツラ王国に出向き、作物を買い求めなけれはならない!しかしお前達の兄ルベンとシメオンがギルデロイ王都に奴隷として捕らえられ、まだ戻ってきていない!私も夢見の一族の力を有する者だ!近々兄達が戻ってくる夢を見た!しばし待つのだ!兄達が必ず戻ってくるから!」

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