第29話 「ポティファルの嘆き」

「我が妻アダよ!

セツラ神官長様は何とおっしゃていたのだ?

我が一門の運命は、お前にかかっているのだ!正直に答えよ!」


「ポティファル様!

今回、私の不徳の致す振る舞いで、ポティファル家を窮地に追い込んでしまった事を深くお詫び申し上げます!どうかお許し下さい!


私は、覚悟を決めました!全ての犯罪を正直に告白致します!

これまで虚偽の発言で、家人達を貶め、彼等を追い詰めた事は、事実なのですから!」


「それでは、セツラ神官長に対する不敬の罪は事実なのだな?」


「その通りです。私はあの方が美形であったので、一方的に好意を抱き、身体の関係を求め、迫ったのは私です。あの方に何の過ちもございません・・」

私が一方的に好意を抱き、私に振り向いて貰えない事で、腹を立てて、「私を誘惑した!」と偽りの証言をしたのです。」


<あの方が女性であったとは・・夫も気付いていないだろう・・

これは決して口外してはならない事として、セツラ神官長に厳命されている・・

これから神官長として、デルタ王国の行政を司る上で男性としてふるまう事が都合が良いと言われていた。セツラ様ほどの美形の男子がいる訳もなく、国民に真実が知れ渡るのは時間の問題だと思うが、私がこれ以上、噂事を口にして、災いを招く訳にはいかない・・今後一切無駄口を語らない!と神に誓ったのだから‥>


「何という事をしたのだ!!!

我が一門は取り潰されるだろう・・もうおしまいだ!!!」

ポティファルは頭を抱え、苦悩し、泣き崩れてしまった・・ポティファル自身も妻の訴えを疑わず、信じてしまい、罪なき者達を裁いてしまった罪はあまりにも重い・・。



「ポティファル様!ご安心下さい!

私が全ての責任を取ると申し上げたではありませんか?」


「責任を取るだと?ふざけるな!

お前が何をしようが、セツラ神官長を貶めた不敬罪が無効になる訳がかなろうが!!それにお前には他にも余罪があるのだろう?

全ての罪を告白したところで、我が一門の汚名が帳消しになる訳でもない・・」


「ポティファル様!

セツラ神官長がおっしゃったのです。全ての悪事を正直に告白し、被害を被った者達の家をすべて周り、深く謝罪し、和解できるように努めよ!と。

謝罪は必ず必要であるのだ!と。」



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