第43話 「宦官長ラルクへの報告」

「宦官長ラルク様!

デルタ市街地の一般市民区域に

カナンの地からの放浪者が現われた、と報告があました。」

近衛兵団長アベルが慌てて報告にやってきた。


「カナンの地だと?

セツラ神官長様の生誕の地ではないか?

詳しく報告せよ!」


「その者は、アブラハ族の者で、奴隷として売られた妹を探しにきたのだ、と言い、同年代の奴隷の少女たちに小遣いを渡し、妹に出会ったら、兄が探している事を伝えて欲しい、と言ったそうです。」


「そうか・・・近衛兵団の中でもセツラ様の秘密を知る者は、団長であるアベル!お前と夢見の一族である神官府の上級神官だけだ!

セツラ神官長の情報は、極秘事項であり、一般庶民、ましてや奴隷の者達が知る由もない・・セツラ神官長を調べようとしてきた者は、即刻捕えられ、厳しい身元調査を受けなければならない事になっている!

 この2年間セツラ神官長様へのテロが多発し、危害を加えようとしてきた呪術師達は捕えられ、処罰されたが、首謀者であるサイカ呪術師は、未だ行方不明のまま・・。決して油断ならない!

 カナンの地の男は、セツラ神官長の命を狙う輩かもしれない!決してセツラ神官長の情報が洩れる事のないように!細心の注意を払わなければならない!!


カナンの男は、まだデルタ市街地にいるのか?」


「いえ・・・3日程滞在したそうですが、帰宅したそうです。」


「すぐにカナンの男の人相を書かせて、門番たちに配布するのだ!

そして今度その男が現われたら、必ず身柄を捕えるように!良いな!!」


「承知致しました!」



同時刻、セツラ神官長も昨晩、自身が見た夢の事で、朝から胸騒ぎがしており、神官府の側近の者に、市街地で何か?変わった出来事はないか?訊ねていた。


「セツラ神官長様!

我々には市街地の情報は入って来ません!

宦官長ラルク様をお呼びしましょうか?」


「いや・・・宦官長ラルクは多忙な身・・

呼ぶ必要はないわ!しかし・・どうも市街地で何かが起きているように思う・・

密かに町の中へ行けないかしら?」


「セツラ神官長様!それは危険です!」


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