第12話 「セツラの境遇」
奴隷として売られたセツラの境遇は、非常に複雑であった。なぜなら、彼女はアブラハ族の同胞・・しかも兄弟達によってイシュマエル人に売られ、デルタ王国の侍従長ポティファルの家で買い取られたのである。
セツラは、牢で夢見の力を示した事で、騒ぎを起こした事により捕えられ、ムチ打たれた時は、痛みが耐えられず、自身の境遇の悪さを嘆いていた。
「何故、自分だけ苦しい思いをしなければならないのか・・私が何をしたというのだ!」セツラは泣いて悔しんでいた。
しかしその日の晩、夢の中で、セツラに語り掛ける起源の主の声があった。セツラは、非常に励まされ、これから自身の不遇は、好転していく運命にある事が知った。しかし・・運命の歯車が動く事は、正直・・・喜びよりも、非常な恐れを抱いた。
なぜなら、奴隷として売られた底辺の立場にいる自分が、やがてデルタ王国の大臣になり、大いなる権力を得る日が来る!しかも・・同胞であるアブラハ族を救い、彼らが自分に頭を地に付け、ひざまずき、命乞いをして、謝罪する日が来るとの事。
「本当にそのような日が来るのか?」
しかし且つてセツラは同様の夢を見た事があった。
◆
「私の見たこの夢を聞いて下さい。見ると、私達は畑で束をたばねていました。すると突然、私の束が立ち上がり、しかもまっすぐに立っているのです。見ると、あなたがたの束が回りに来て、私の束におじぎをしました。」
兄たちはセツラに行った。
「おまえは私達を治める王になろうとするのか。私達を支配しようとでも言うのか。」
<この夢をきっかけに、私は兄達に恨まれるようになり・・・夢を安易に語るべきではないと悟った・・なぜなら・今の奴隷の身分に至ったのは、元はと言えば、兄達に憎まれるようなったが所以なのだから・・・あまりにも切な過ぎる・・・>
◆
今回、献酌官長と調理官長に対して語った夢については、黙って見過ごしてはいけない!と起源の主からの強い諭があった事は確かな事である。
「さぁ!右大臣ペルトリカ様にパロ王の夢の提言を行おう!
なぜなら自身の人生が大きく好転する事は確かな事であるから・・」
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