第11話 「王都裁判」

「私は、王都裁判長リカンである!

これよりパロ王毒殺反逆罪の裁判を行う!

調理官長と献酌官長を連れて参れ!」


調理官長は、顔面蒼白で青褪めており、自らの潔白をはらす為に弁明の機会を懇願した。しかし献酌官長は、牢において自らの潔白が晴らされることを予見していたので、不思議と落ち着きがあり、真っすぐ裁判長の顔を直視し、どのような結末が言い渡されようと、覚悟はできていた。

<私は無実だ!>


「ポティファルの奴隷セツラをここに連れて参れ!」

セツラは、身を清め、真新しい衣服に着替え、清潔な装いをしていた


「お前は、罪人調理官長と献酌官長に対して

夢の解き明かしをしたそうだが、どのような権威によって、そのような行為をしたのか?彼等が王の命を狙う罪人であり、王都裁判によって判決を受ける立場である事を理解した上での行いか?」


「裁判長様!お聞きください!

私は、侍従長ポティファル様の奴隷に過ぎず、法の裁きに対して意見を言える立場ではありません。しかし起源の主が語られたのです!私が見た夢が、あまりにも鮮明で、罪無き方の命が掛かっている事を知り、真実を知るお方が、私に言葉を与え、語るように命じられたのであります。誓って!法の裁きを歪めるつもりはございません!」


「セツラよ!お前が見た夢をもう一度聞かせてはくれないか?」


「承知いたしました!

私は夢を見ました。晩餐会においてパロ王の為に葡萄酒とパンが用意されており、献酌官長は自らの手で葡萄を絞り、心を込めて用意がなされ、調理官長は、あらゆる種類の食べ物を入れた籠が置かれ、管理を怠った為、烏が籠の中の食物を全て食べてしまいました。お二人が用意されたものは、パロ王への忠誠心を現しています。罪ある者の悪意が烏によって現れており、明らかな罪人を示している事を理解できました。それ故に献酌官は無罪であり、調理官長は悪意が漲っていた。夢の中で、神が罪人を示されたのであります!」


「貴様!奴隷の分際で何を言っているのだ!!!

裁判長!夢の中で見た内容が、裁判の場で語られるなど、神聖な裁判を冒涜しております!このような戯言を言う者は、即刻退出させ、奴隷の身に戻すべきです!」

調理官長は、喚きながら叫んだ!


「見苦しいぞ!調理官長!お前が自ら犯した罪が、明るみになっている事を知らないのか?お前の身辺を調査し、証拠となる毒物が見つかり、献酌官長に罪を被らせようと企んだ証拠も見つかっているのだ!夢の内容だけで、お前を裁いているとでも思っているのか?愚か者めが!!!パロ王の判決を言い渡す!

調理官長を木に吊るし、烏の餌となるようにせよ!」


調理官長は木に吊るされ、献酌官長は、献酌の役に戻され、杯をパロ王の手に捧げる事が許された。



「夢見の少年・・・いや少女か?

彼女を私の屋敷に連れてきなさい!彼女の身分を回復させるのだ!!」

右大臣ペルトリカが命じた

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