第8話 「侍従長妻アダの夢」
その晩、侍従長の妻アダは夢を見た
◆
<あなたは、これまで欲望を抑えきれず・・数多くの家人達を誘惑したその罪は重い・・そして今回夫ポティファルの執事セツラ・・あの者は『幸運なる者』である。
セツラが主人の財産を管理してから、どれ程の幸運が、あなたの家に舞い込んできたか?あなたは知っているか?
侍従長の妻アダは、夢の中で自身に語られる声に聞き入っていた・・
「あなたは誰ですか?
何故私にこのような言葉をかけられるのですか?」
「我はセツラの一族を守る守護者である!
セツラは、夢を司る一族であり、特別な力がある事を・・軽んじた故に
ポティファルの家に与えられた「幸運」は取り去られるであろう・
侍従長の妻アダよ!
あなたは自分の身が招いた悪しき行いの・裁きを受ける日は近い・・
侍従長の妻アダの視界は閉ざされ・・幻想的な場面が現われた
◇
<輝かしい太陽が照り・・実りが豊かで
手を伸ばし、捥ぎると甘酸っぱい果実は
人々の憧れの的であった・・・しかし
果樹園の管理者の妻は、果実への関心に思いを寄せず
放置し、管理を怠った為、収穫の秋に、手にすべきであった豊かな果実は、手に入れられなかった。その後、果実の『本当の価値』を知る事になるが、後の祭りである。
失った果実は、二度と手に入らないばかりか、自ら行った悪事が明るみに出て、隠しようのない恥じらいに、身を隠しても、一生恥と恥が追ってくるであろう・・>
◆
翌朝、侍従長の妻アダは冷や汗が止まらず。自分がいかに愚かな行為をした事か・・セツラの顔が浮かんではいたが、彼にいつか謝罪する日が近い事を知る由もない・
傲慢な女アダは、夢の中の悟りを経験したが、なお自分の愚かさに・・まだ気づいてはいない。愚か者は愚か者なのである・・・。
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