第10話 約束を交わした

 ――あつい、あつい

 ――お日様が、あついあつい

 ――ああ、おまえさまか

 うれしくて。

 ――なんてうつくしい桃、赤、白

 ――ほら、甘い、この花の汁は甘い

 ――ほら

 たのしくて。

 ――食べるといい。暑いときはこれを食べると

 だから。

 ――やくそくをしよう

 ――まっている

 ――いくらだってまっている。だからかならず

 いのりたいにくちにした。

 ほんとうは、じぶんこそ、みんなをすくうそんざいなのに。

 だれも、すがるものはいないけど。

 

 だのに、

 みてしまった。

 ああ

 あああ

 あああああああああああ!


 ――おのれ、おのれ、裏切者めっ! うそつきめ、口先だけで騙しよって! 約束一つは果たせぬか! 

 くろい、くろいいかり。

 いのりはなんてもろいことか

 だれもわしをすくってくれぬ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る