第44話 名前を呼んで

『それは私じゃないと思うその今どうしてるのっていう』


『それ夫婦の会話であって私へ向けてないと思う』


「あとちらっとこっちを見てみる」


『見てみても私の名前、違うから』


 いやいや、祖母の今の名前を呼ぶ異世界の人っていないから。

 


『私に向けた会話じゃないから』


『見ながらでも、夫婦の何か知り合いのその二人の会話だと思うから』


『間に入れない、名前を言われていない』


『名前ちゃんと呼んでもらわないと』


「さっきも無言かもしくは何か言葉を返す?」


『無言』


「無言!?」


『なんせ何も私が答える必要もないし』



 まさかの干渉しない10歳少女。



『何もないの、引っかかりがない』


「まあ無言ね……」


『うん無言』


「まあ良いわ。じゃあ、まあまた次にできるときに教えてちょうだい、といって」


「また夫婦の話に戻っていっちゃいました」


「食事も終わったので、まあ」


「食事が終わった状態で当然執事の人たちがね」


「食器回収し始める」


「まあその後、話し続けている感じ」


「自分は座って聴いている状態なのかな」


「旦那も終わった、じゃあどうする?」


『うーん私は、こう食器を下げだした段階で、失礼しますって』


『もう終わり。必要ないじゃん、そこにいる必要がない』


『ご飯を食べ終えた、皿を下げられる』


『その人たちは身内でもなきゃ何でもない、ただの夫婦』


 ココまでわかりやすいお膳立ての演出を入れても、頑なに10才少女の親と認めない87歳祖母。

 これどうしよう、話進まない(;´・ω・) と内心焦る。




『で私、自分の所に帰る』


「ちなみに魔法とかって言葉を聞いてもピンとこない?」


 奥さんがミランダ嬢に、「ミランダは、今の魔法の修行はどうなっているの?」と聞いている。

 魔法というワードが初めて出たのであれば、使えるかもしれないという興味がわくだろう。




『魔法? 魔法はないと思う』


「ない!?」


『うん』


「マジで……まあ戻るのね」



 ミランダ嬢は通常の100倍の魔法放出量をもつチート悪役令嬢の設定だ。

 しかし、魔法を本人が自覚して活用しなければただの美少女。

 ゴール設定は、チート魔法や現代の知略を活用してクリアできるにしてある。

 これを後から変更するきは更々ない。俺のゲーム制作者としてプライドで、絶対に変えないのだ!


 だから、例え高齢者であっても、楽しく2時間で終わるTRPGにしているので安心である。



 そう思っていた俺は、後々公開することになる、このプライドから生まれた絶望の悪魔に。






「そっか、まあ戻ってもまあ当然ね、自室は綺麗に整頓されていてね」


 どうすんのコレ、って絶望しながら頭をフル回転させて、何とかして魔法を引き出して無双できるとと思わせないとヤバいと直感する。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る