第9話 べこ

『ちっちゃいベコ、子牛』


「何歳位?」


『生まれて、何カ月』


『それを売りに出すんだから。ちょっと大きくなると』


「え、そうなの? だって労働力として使わないの? なんか土肥やしたりみたいな」


『それは草をあげる』


『どっかの自分ちの土地の草を刈って食べさす』


「その子牛については、肉にしちゃうってこと?」


『いやいやいや、また次の働くところにするか』


『肉にする場合もあるわね』


『私だから牛の世話もできる』


「当時はどんなことやってたの?」


『まあでもあんまり、お母さんはね手綱で叩きながらしてたけど』


『私は、それはできない。ただ餌をやるぐらいだね』


『あのフンをきれいにしたりとか』


「やったことある?」


『あるある』


『なのでうち牛飼ってて、種付けして生まれた子を売るのね』


「マジで?」


『売ってたの。で、行くときね』


『この、何で行ったのか知らないけど泣けてね』


『かわいそうでかわいがってたの売るのだもの、親は』


『その売るためにまた産ませているんだから。うち何頭もいらないし、一頭いりゃいんだから』


「え、でも一頭だとオスメスたりなくない?」


『だからオスをよそから借りてきて、交尾させて産ませて、だから借りる』


『オスの牛を借りてきてメスと交尾させて子供産んだら、その子供を育てて金になるわけよ』


「子供がオスだった場合ダメなの?」


『オスでもいいよ何でもいい』


『オスだったら肉にされると思う』


「そうなの? それでオスメスで交配とかしてまた増やす、ではなくて?」


『それはもうちゃんとしたオスはどこかに借りることできるから、メス一頭でよい』


『ちっちゃいときに子犬みたいなとき』


『ちょっと大きめの犬みたいなもんで、なついてくんだよね』


『ずっと世話してると可愛かったよ』


『それが売られて金の元だからね』


「どれぐらいで当時売られてたの?」


『わからない。私子供だし金額はわからない』


「当日は小学生とか中学生くらい?」


『そうそうそうそう、小学生くらい』

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