第30話 完走した感想

「もしばあちゃんの今の状態のまま戻ってきたら多分できないよ」


『腹減って雨ざらしで死ぬー』


「だって5キロ歩くからね」


『今はとんでもない、バス停まで歩けないのに』


『それあそこの世界に入っちゃったら歩けた』


『この低い年齢に戻ったからできたことであって』


『そうじゃなくて今のままでは、ダメよ』


「いくら叫んでも人いないし」


「山をおりるっていう」


『降りる選択肢、おりられないじゃん。転げるわけでもどうにもならないから、野垂れ死に』


『そこで最初にダメ私ここで死ぬ』


「大半はだいたい運命の人だったら追っかけたりするんだけど」


「珍しいと思う。たぶん珍しい」


「もしかすると今のおばちゃんクラスの年代の方だったら、そっちが主流かもしれない」


「死に関しても怖くないかもしれないし、若かったら違う。死が怖かったりする」


「当然、うちの母さんとか聞いたら、全然違う意見出てくるし」


『出てくると思う』


「完全に好みで自分の生きてきた中で、多分構築されるだろうから、生き方が」


『あの話を持っていくことがうまいのよね、聞き方が』


「ああー、ちょっと誘導しているからね」


『ちょっと誘導してくれたじゃない』


 ちょっとじゃなくて、かなりなんだけどなぁ。

 誘導なしだったら、たぶん王都に入ることなく生活していそうだった。



「少しずつ答えだしてるから」


『これくらは歩けるっていう範囲を言ったじゃない』


『最初から10キロって言われたら考えるよね』


『まあ5キロならできる範囲で。コレいきなり10キロ歩く』


『歩かなきゃダメつったらまた答え変わってる』


『でも良かったし面白かった』


 こうして、初の祖母との異世界TRPGは終わった。

 最初から設定やトラップがあり、それをどう潜り抜けるかというゲームだったが、途中で変更を余儀なくされることが何度かあった。

 その場で代替案を考え、都度アドリブで色々きり抜けてきたが、とても勉強になった。


 説明不足や考察不足があり齟齬が生じてしまったが、やはり一番つらいのは祖母が魔法とか異世界に対して一切の知識がないことだ。

 ステータスオープンとかレベルアップとかスキルとか、そういったものを使おうものなら、まずソレ何? になってテンポが悪くなってしまう。

 また、お金のやり取りは直接円変換して伝えた。ロールプレイを楽しむためには、ある程度ご都合と省略は必要である。


 今回はお互いに慣らすためにシンプルな1時間転生でやってみたが、次回からは流行のジャンルを祖母に聞いていきたいと思う。


 魔力チート、悪徳令嬢、ループもの、追放ざまぁ、超強い魔族ショタに好かれる、イケメン奴隷を買う、スローライフ(要る?)、神様からスキル貰う、などなど。


 正直、ワクワクがとまらねぇ!



 <今回の異世界設定>


 ①参加者は20歳で若返り転移し、山の中で目覚める

 ②ぼろ布を着て、切れにくい石包丁だけ所有している

 ③山→団子屋→王都。移動はそれぞれ5km

 ④王都の直前で暴漢二人組が道の外れで狙っている。捕まると暴力を受け、所持品が奪われる

 ⑤王都には検問があり、身分証明がないと入れない。周囲は3mの壁

 ⑥王都の護衛兵に、一番親しい人=夫が若い状態で記憶なしで転移する

 ⑦親しい転移者と手と手が触れた時点で元の世界に戻る

 ⑧言葉は通じるが、文字は読み書きできない



 ↓結果

 

 ③山→団子屋→王都   ⇒   山→団子屋→ヤクモ村→王都

 ④暴漢スルー

 ⑤ヤクモ村に戻り、親しい農家と一緒に入る

 ⑥夫を見かけるがスルー。その後散髪で稼ぎ、告られて半年後に結婚し二児の母に。

 ⑦戻る気配がないので、直接転生者を操って握手させて帰還

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