第17話 稼いだ金で食事

 散髪を100円で提供すると言ってきた。

 道具や施設がないにしても、この価格は安すぎる。


 聞いた当時は違和感しかなかったが、後日「理髪料金 昭和」で調べてみると割と妥当だったことがわかる。

 終戦直後、祖母は7歳の小学校中学年。当時はなんと散髪は3円50銭。

 物心ついて働きだす20歳~40歳の時代ではインフレが進み、150円~1900円となる。

 物価は時代によって違うので一概には言えないが、若いころの価格を思い出すのであればおおむね正しいのである。



「場所はどこで? 今ちょっと声かけて街の真ん中にいる感じ」


「一応話は成立したけど、じゃあどうすんのっていう」


『どこか石があったら少し座って、どうぞお座りくださいと言って』


「で座ってもらって」


『なんとか稼がなきゃいけないじゃん。何にも、なんにもないのに』


『まあ刃物が入ったから石がたぶん石ぐらいあるから』


『ちょっと安くするから』


「そうかそうか、まだ刃物しかないからね」


『切らせてくださいって』


「こんな感じで切ってって言ったら切れましたと」


「ああいいじゃないよかったよかった」


「じゃあこれで一応、その人の分はOK」


「銅貨3枚、300円くらいある」


 村から移動、荷下ろし手伝い、ナイフ探し、散髪とやれば、もう昼過ぎである。

 そろそろ食事だと促し、どう空腹を満たすか聞いてみる。


「じゃあここで食事を」


『何か食べないことには倒れる』


『どこ食べます? 一番安い何か』


「食堂もあるし、なんかほんと果物がわぁーって並べられてて」


「バナナみたいな、そういう食べられそうなものが並べられてて安いし」


「食堂は調理しているものだから高い」


『でも払える金だったら即、食堂入る』


「食堂いっちゃう」


 え、自炊はしないの?

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