第16話 いくらでするの?

「ただこれで一応髪が切れそうな刃物が整ったよと」


「じゃあどうしましょう? 一応今、お昼くらいね」


「一応食事は朝してきたけど。まあまあまだ、食べてない、そうだね」


『食べさせてもらえない乞食みたいに、お恵み下さいはしたくないから』


『金払って食べれるように早く自分のひとり人でもカットして』


『金ちょっとでもいいから貰って、食べられることあればそれが一番だよね』


『通りがかりの人を捕まえるわけない、店がない』


「店はない。ただ人はそこそこ歩いている状態で」


「見れば髪の毛がボサボサの人もいるし」


『だったら声をかける』


「おお、どんな感じで?」


『どうですか、私髪きれいにできるんですけど切りませんか? お金はこれくらいです』


「どれくらい?」


『どれぐらいだろうね』


「いくらするの? 興味を持ってくれた人がいました」


 20歳に若返った祖母は、美人という設定だ。ちょっと大通りで声をかければ、すぐお客は捕まる。



『時代が時代だから、そんなに高くは言えないね』


 自分が学生の頃はバーバ―と呼ばれる個人理髪店があり、散髪には3000円ほどかかっていた。

 今はQBハウスで1200円(当初は1000円)で切る事ができ、地元の激安カット店は690円と、さらに安い。


 さて、おいくらで切ってくれるのだろうか。






『普通だと100円でも良い』



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