第34話 執事

「お嬢様、食事を持ってきてるんですけども」


 ちょっと声低めにカッコよく言ってみる。ちょっと恥ずかしい。



「食べられないんですか?」


『今は結構です』


「承知しました。ではまたお昼時にお食事を用意しますね」


『おおー』


「で、帰っていった」


『そうしたら、ちょっと考えるね』


『ひょっとしたら私の親しい人たち。何かで連絡がついてて』


『運んでくれる人って昼になったら思う』


『朝も来て、昼も来るのならそれは何か』


『誰か親か誰かが、連絡してるから』


『誰かが連絡して届けてくださいっていう』


『お願いしているなと思うから、そこでは受け取る』


『昼また同じような声で来たら』


『あ、この人は頼まれているんだ』


『私の知ってる親か何か、誰か知らないけど』


『頼まれて運んでんだろう、と』


『そうすると、朝昼晩、届けるように頼まれているのだと思うから』


「じゃあ今、朝は断りました」


「そのあと4時間ぐらい空いているのでね」


「そのままずっと考えててもいいし、行動しても良いし。どうする?」


『何もしませんね』


 ですよねー、知ってた。



「じゃあまあお昼ぐらい、ちょっと小腹が空いたかな、みたいなタイミングで」


『ちょうど来たらね』


「お昼ぐらい、時計も一応、部屋の中についているからね」


「そうしたらじゃあ、お昼くらいに」


「お嬢様、お昼のお食事できました」


「で、まあコンコンってなってから」


『ああ、どうもありがとうございますってドア開けて受け取る』


 設定上は令嬢と執事のはずなのだが、お客さんと配達員の関係になってしまっている。

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