第46話 10歳と終戦

「当然見ると裸の状態ってやっぱりどうしても」


「まあそもそも10歳だからね」


「あれだよね、胸も出てないし」


『10歳だったら、恥ずかしさとかないと思う』


「だって小学校なってるかな?」


『4年生』


 即答。10歳で4年生が計算なしに即答できるのは、ちょっと違和感があった。



「だよね、まあちょうど成長期か」


『いやそれは私、平気だと思う』


『もし親がやってくれるんなら』


『どこまでやってもらっても親に任せる、10歳なら』


「ちなみにこれ、俺わからないのだけど、10歳の娘って胸出てる?」


『ない』


 小学校の頃を思い出したが、高学年は女子たちの背が高かった印象はある。だが胸はわからなかった。



「ないよね?」


『うん、胸ない』


「でも成長期ってさ、女性の方が早くなかった?」


『ない、まだない』


『生理もないし、生理が中学にならないとないから』


『それもないから恥ずかしさも少ないと思う』


『それはあれでしょ、女になるから恥ずかしいが出てくる』


 なるほど、女性の特徴が出てくると恥ずかしさが出てくる、と。家族と一緒にお風呂に入らなくなる年頃もこの辺りだろうか。



「その体拭くとき、脱いだ時に」


「いやこれどう考えても若いよね」


「若いってことか幼いって気づくよね」


「そのとき、どう考える?」


『今いきなりそこに戻って』


『先を知らないとしたら、としたら何にも感情ないね』


『それを経験してるから、いろんなものがよぎるけど』


『何もなく10歳だったら感情豊かな女の子』


「ばあちゃんが、ここで86歳までやってて気づいたら」


「そこにいたっていうのはもちろん知っているからね」


「その10歳の頃の状態で、じゃあないからね」


「それがまったく子供のリアクションしかとれないじゃない」


『あ、そうだよね』


『不思議なことだよね』


『先が今の人生と違う歩みをしてきたから』


『戻ってみたいね』


「戻る?」


『今まで嫌なこと全部、やらなくても良いのだからね』


『10歳から、いいとこ取りだから』


『戦争は終わってるし』


 ここで戦争の話が出る。



「戦争はでもね、わからないね。そっちの世界はまだ外を知らないから」


『あっ! まだ自分は分からないんだ』


「だって外を見てないもの」


『10歳で終戦になったってことを知らないんだ』


 2022年で86歳だと、1945年は当時9歳から10歳

 なるほど。広島の内陸部で原爆の光と終戦を体験したから、小学校4年だったことを明確におぼえていたのか。



 偶然に設定した10歳魔法令嬢は、祖母の終戦の年と一致した。なんという偶然だろうか。

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