第27話 帰還

 長かった86歳祖母の、異世界転生TRPGは幕を下ろした。


「条件はシンプルで、その誠さんの人と実質、手と手を触れ合うってのが条件」


「その触れた瞬間に目が覚めたってよりも、おそらく戻ってきた」


「その前の若い娘さんと真琴さんの握手したことによって」


「そっちはそっちで楽しくやっているけれども」


「結果それをトリガーにして、こっちへ戻ってきました」


『これはもう終わって、現実に戻ったと』


「ただ現実に戻った時でも、山で気づいた時から結婚した時までの記憶を持ってる状態」


『現実もどるの?』


「戻ってくる」


「今ちょっと起きました、という状態だったらどんな感想?」


『すごい良い夢見たなって思うね、そりゃそうでしょう』


『現実に戻って膝痛いわ、歩けないわ、年取ってるわ』


『あら、良い夢見たわ私と思うわ』


『すごい苦労したけど、いい夢だったなと思うね』


『あれがいきなりストンって現実に戻ったら』


『それが実際にあったとは思えない』


『あったらよかったなと思うけど』


「でも、いい夢見れたなって」


『そうそうそうそう』


 2時間以上、こうやって祖母と孫がゲームをやっていたけど、楽しかったと言ってくれた。

 それだけで何だか胸が熱くなり、思い付きで誘ってみて良かったな、と思った。


 そして、これらの録音情報を考えた時、対話そのものを改変せずなろう小説として投稿したらどのような反応がするのか気になった。


 間違いなく、展開が遅くて1話切りされるだろう。

 誰も声をかけてくれない放置プレイであり、ハーレムも奴隷猫耳もチートスキルもない。


 唯一の関連キャラは、記憶を失った若き夫だけ。

 この2人TRPGの仕組み上、複数キャラで囲ってハーレムなんてできない。

 まずGMの脳みそがパンクするからだ。

 演じるにしても、相応の知識と使いわけができないと違和感バリバリだ。



 率直な感想としては、とても楽しい遊びだったこと。自分が作ったゲームで楽しんでくれたこと、そして祖母の意外な一面が見れて嬉しかったことだ。

 何もわからない辺境の異世界でただ1人、這ってでも生きようとする姿が見えて感心したし、もっと尊敬するようになった。



 おじいちゃん転生系なろう小説を、コレだけのリアリティを考察して書くのは難しい。というか、書けない。

 仮に文学レベルで描けたとしても、まず評価されずに埋もれてしまうだろう。



 正直、こういうリアル実体験をなろう小説に組み込むジャンルが、今後出てきても良いのではないか? そう思った。


 他の人の実体験やTRPGを見てみたい。

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