第6話 王都の検問

「そこで検問みたいのがありました。要は悪い人は入っちゃダメとか」


「なんかちょっと行列ができてて、国民をそこの市民であることを示すカードみたいな」


「要求されるわけ、でも残念ながら手元にそれらしきものはない。どうしましょう?」


 ここでは身分証明のカードがないと、王都に入れない。

 必須のイベントで、どのように王都に侵入するかの手腕が問われる。


『えーっとね、私ぐるっと回ってその検問の見えない横っちょを通る』


『グルーッと回って、私そういうのを感じたことあんのよ』


『夢で見たんだかなんだか。そこを通れないの私は。私はそれでぐるっと回って』


『その人たちの見えないところぐるっと回って、先に行きます』


「ただ当然柵とか壁とかもあって」


「検問のところはもちろん空いてるけど他のぐるーっと回る迂回ルートで当然、壁とかね」


『どこまでも?』


「結構距離ある」


『どこまでもあるの?』


「ずーっとではない」


 昔でいう万里の長城のような高さが見える限り並んでいる、と伝えたかった。


「その検問の人が見えない視界のところでちょっと壁、覆われてるから」


「壁があってまあ、まあまあ頑張れば登れなくはないかなって」


「3メートルぐらいの高さはあって当然、ボロイ部分もあるよ」


 王都に入るためのヒントを出す。どう食いつくか。


「迂回してもそう簡単にずるできないような仕組みがあるという状態だったら、どうするか?」


『ああでもなんとかそこを通してほしいけど身分証明がないし』


「その王都のグルーッと回る、3分の1ぐらいまで回ったのかな。その場合じゃあどうするか?」


『戻ってきてその検問している人に話す』


「話す、どこまで?」


『全部今まであったことを話して、自分の身分証明するものがない理由を話してして通してくれるかな?』


『それを通してくれないかな? 困ったな後戻りするしかない』


「今それで仮に交渉したとしても当然ね、身分証明書のない輩から入れられない」



『入れてもらえない』


「当然、もっているひとだけ通す。馬車とかでも通す、でも怪しい人は通せませんよと」


 キマリは通さない。


「そうなったら」


『いくら話してもダメだったら、元のお世話になったところまで戻る』


「戻る!?」


『だって行きようがないじゃん』


 まさかのあっさり諦め。さらに、元来た道に戻ると言い出す。



『私ぐるっと回って見えないところから、また次いるかと思ったらその塀が延々とあって』


『登れない行けないだったら戻るしかない、戻る』


「なるほどね」


『もとの親切な』


「5キロあるよ!?」


 待って! 決断速すぎ、もうちょっと様子見るとか魔法使ってみるとか。


『5キロ戻る』


『だってそこいけない! 理由を言っても許してくれない』


『回ってもいけないとなったら戻る』


 彼女の意思は固い。侵入のヒントを出したとしても、聞いてくれないだろう。


「じゃあそのまま村まで戻ってきました」






『それから、困るね』


 俺も困る。1時間でTRPG終わらせる予定なのに、これじゃあ終わらなくなってしまう。

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