第36話 廊下
『そうなら、器を廊下に出しておきます。食べ終えたら』
「なるほどね、回収は別に……」
「待っていれば回収してくれると思うけど、とりあえず律儀に」
これを聞いて、パッっと昔ながらのお寿司注文の後の返却を思い出した。
昔は、配達のすし屋が器を回収していたが、今の配達系は使い捨てパックである。
「ドアを開けて、ドアの外で廊下に置いて出たら」
『外に、廊下においておく』
「イメージは、出たら、そこに通路がぷわぁ―」
「で、ドアも向かいにあるしね」
「当然ね、隣まで見れないけど、顔を出した時点で」
「一直線のこの廊下、階段も奥にちょっとありそうだし」
「明らかに、金ありそうだ」
「ちょっとドアを開けただけで」
「食べた食器を、廊下のすみの所におきました」
『取りに来るまで待たないで』
『食べ終えたら開けて、戸を閉めます』
『書くかもしれないメモ入れるかもしれない』
食器下げておいてとか、美味しかったです、みたいなお礼でも書いておくのだろうか。
『器だけはここには置かない。出します廊下に』
「で当然ね、飯食ってね」
「夕方もぼーっと待ってます。トイレ行きたくなるよね」
『なる』
『とうぜんなる』
「どうする?」
日本がトイレに異常な執着があるだけで、普通の国は水洗やビデの文化は少なかった。
中世ヨーロッパの世界は、石炭も水蒸気もない垂れ流しやお丸の文化である。
水洗のない時代に対して、どう対応するのか聞いてみたのだ。
『トイレがないの?』
「だって、室内にずっといるからね」
『その建物の中の一角に共同のトイレとか』
『炊事場とかありそうなもんだけど、それも一切なく?』
「わからない」
『分からないんだ、私が出てないから!』
「そういうこと」
『出てないから何があるかわからない』
『ああ、じゃあ探す。まず』
『トイレへ行きたくなったから、この建物の中にトイレがあるとないか探す』
「だよね、じゃあもうドア……」
『開ける』
「で、どっちにいく?」
『階段もあったら、階段じゃない方へ行く』
「まあ下りの階段だね」
『じゃあまっすぐだったら、まっすぐ行ってみる』
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