第20話 峰本さんとデート② 元カノ登場

  映画は峰本さんが観たいと言ったアニメの映画を観ることになった。

 そのアニメは最近話題の人気アニメで俺もアニメだったので二つ返事をした。


「面白かったですね!」

「だな。やっぱりあのキャラクターはカッコいいよな。炎の演出とかリアル過ぎた」

「分かります!私は黄色い髪の子が好きです。雷の」

「あー。いいね!そのキャラ女性人気高いよね」


 趣味が同じってのはつくづくいいものだな。

 峰本さんがアニメ好きだったことには少し驚いたが、好きなものを共有できるのは幸せだ。

 元カノとはそういの一切合わなかったから、余計にそう感じる。

(峰本さんが彼女なわけではないけど……)

 まだまだ話したりなかった俺たちは寡婦でお茶をして帰ろうということになり、近場のカフェに移動した。


「峰本さんはカフェとか行くの?」

「実は、カフェも初めてなんです」

「そうなんだ」

 

 カフェ初体験の峰本さんはメニュー表を真剣に見つめていた。

 すでに何を注文するか決めた俺が峰本さんのことを眺めていると少し離れた席から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「あははは、何それ面白い~!裕君って面白いね~」


 俺はこの声を知っている。

 忘れるわけがない。 

 俺の中の苦い記憶……。


「どうかしましたか?そんな苦しそうな顔をして?」


 顔に出てしまっていたのか峰本さんに指摘されてしまった。


「ううん。何でもない。それよりも何にするか決まった?」

「はい。私はこの春限定パフェにしようと思います」

「そっか。じゃあ、店員さんを呼ぼう」

 

 俺は手を挙げて店員さんを呼び、春限定パフェとチーズケーキ、それからココアを二つ頼んだ。


「それじゃあ、話の続きをしましょうか」

「そうだ……」


 映画の感想会の続きをしようと思ったところで「あ~。やっぱり正輝じゃん~」と突然声をかけられた。

 その声に俺と峰本さんは振り向いた。するとそこには髪を金色に染めた元カノの坂根三奈さかねみなが立っていた。


「こんなとこで会うなんて偶然だね~」

「そ、そうだな」

「え~。冷たくない~」

「何か用?」

「なんだか懐かしい声が聞こえたから見に来たんだよ~。そしたら、正輝がいたからビックリ!」


 そう言ってケラケラと笑う三奈。

 

「で、何の用だよ。用がないなら帰ってくれ。俺たちもう赤の他人だろ」

「そんなこと言わないでよ~。私は今でも正輝のことが好きだよ?」


 そう言って俺の上に抱き着こうとしてくる三奈を俺は拒絶した。


「心にもないこと言うなよ」

「ほんとだって。正輝も楓も裕君も、それからね~」


 どれだけ男の名前を挙げれば気が済むのだろうか。

(てか、どんなだけ好きな人いるんだよ)

 俺は三奈のこの男癖の悪さに嫌気がさして別れることを決めた。

 初めは可愛らしい子だと思った。しかし、日が経つにつれて三奈の本性は顕になっていった。何人もの男と同時に付き合って、男をもて遊ぶ女。それが坂根三奈とい人間だった。今だってそうだ。『裕君』とかいう男と一緒に来ているはずなのに、彼をほったらかしにして俺のところにやってきている。

 三奈は基本的に男はアクセサリーとしか思っていないのだ。 

 こんな奴と半年も付き合っていた去年の自分の殴ってやりたくなった。


「もういい。自分の席に戻ったら?連れがいるんだろ。それに俺もデート中だ。邪魔しないでくれ」


 俺は絶対零度のような冷たさでそう言った。

 三奈が俺の前に座っている峰本さんのことを見た。


「へ~。この子が正輝の今の彼女なんだ。美人な人だね~。同級生?」

「お前には関係ないだろ」


 どうやら峰本さんの学校での変装はうまく成功しているようだった。

 三奈には心当たりがないようだった。


「元カノを『お前』呼びか~。三奈悲しい~」

「ハッキリ言うけど、俺はもうお前のこと好きじゃないから。顔も見たくないと思てる。だから、早く自分の席に戻ってくれない?」

「まぁいいや。久しぶりに顔見れてテンション上がったし、許してあげる!またね〜」


 三奈は俺に笑顔で出を振ると自分の席へと帰っていった。


☆☆☆

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