デート編
第19話 峰本さんとデート① 聖女様初めて電車に乗る
『女神様』と『聖女様』に介護される日々はあっという間に一ヵ月は過ぎ去った。
そして、今日。
俺は峰本さんとデートをすることになっていた。本日のデートコースは峰本さんが考えてくれているらしい。
駅に集合と言われたので、集合時間十分前にやってきていた。
「峰本さんが考えるデートコースか……」
お嬢様が考えるデートコースってどんなものなのだろうか。
そんなことを考えていたら「お待たせしました」と峰本さんに声をかけられた。
「おはよう」
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
春らしい白のワンピースを着た峰本さんは髪の毛をいつものおさげではなくハーフアップにしていた。眼鏡もかけていない。
「ずっと気になってたんだけど、峰本さんのいつもかけてるメガネって度は入ってるの?」
「いえ、あれは伊達メガネです。私、目は悪くないので」
「そうなんだ」
どうやら完全にその美しい容姿を隠すためだけにかけているらしい。
(まぁ、かけてた方がいいんだろうな……)
峰本さんがやってきてから、視線をものすごく感じる。
もちろん、それは俺に向けられたものではなく、すべて峰本さんに向けられたものだ。こんな視線を学校で一日中浴びていたら気が滅入りそうだと思った。
「それで、今日はどこに行くの?」
「電車に乗って、隣町に映画を見に行きたいと思ってます。木村さんは電車に乗ったことはありますか?」
「まぁ何度か」
「そうですか。では、まず乗り方を教えてください」
「え?もしかして、峰本さんは電車に乗ったことないの?」
「実は……そうなんです。だからその、乗ってみたくて」
「そうなんだ。じゃあ、まずは切符を買うとこからだね」
俺たちは切符販売機に向かって目的地の隣町の切符を買った。
「それで買った切符をこの機械に通す。俺の真似をして」
「分かりました」
峰本さんは俺の真似をして切符を機械に通した。
出てきた切符を取り出した峰本さんは「凄いです!」感動していた。
「後は電車が来るのを待つだけかな」
電車は数分後に駅に到着した。
休日の午前中ということもあって電車内は割と空いていた。
開いている席に峰本さんと隣同士に座る。
「座れて、ラッキーだね」
「そうなんですか?」
「うん。座れない時もあるからね」
「満員電車ってやつですか?」
「そうそう。あれはもう、恐怖だね」
俺も電車には何回かしか乗ったことがないが、満員電車に乗ったときは生きた心地がしなかった。
「そうなんですね。乗ってみたいです!」
何故か、峰本さんは目をキラキラと輝かせていた。
「マジで言ってる?やめた方がいいぞ。それに、峰本さんほどの美人が乗ったら絶対に痴漢に遭う。もしも、本当に乗るなら、友達と一緒か信頼できる人と一緒に乗ることをオススメするよ」
「じゃあ、木村さんとですね」
「は?なんで俺……」
「だって木村さんはお友達でしょ?」
「まぁそうだけど」
「それに同級生で木村さんほど信頼できる人は他にはいません」
峰本さんの中で俺の評価はかなり高いらしい。
(評価が上がるようなことをした覚えはないんだがな……)
たしかにあの日、屋上で一緒にご飯を食べて以来、峰本さんと美術準備室で一緒にご飯を食べるようになったし、それなりに打ち解けてもいた。
それなりに心を許してくれていると思っていたが、まさかそこまでとは……。
(もしかしたらこれ以上は関わるべきではないのかもしれないな)
峰本さんの俺に対する評価が高いことを知って俺はそう思った。
「だからお願いします。一緒に乗ってください」
「そんな羨望な眼差しで見られても……」
「今すぐではなくていいので、考えといてください」
「わ、分かった……」
俺が頷いたと同時に電車が隣町の駅に到着した。
峰本さんと一緒に駅を出るとそのまま映画館に向かった。
☆☆☆
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