第21話 峰本さんとデート③

 三奈が去った後、すぐにチーズケーキと春限定パフェとココアがテーブルに運ばれてきた。

 俺は早速、苦い気持ちを飲み込むように甘いココアを飲んだ。


「変なもの見せたな」

「いえ、さっきの方は?」

「ん?元カノ・・・・・・」

「元カノさん・・・・・・ですか」


 そう呟いて、峰本さんも同じくココアに口をつけた。


「元カノさんってことは今は付き合ってないんですよね?」

「そうだな」

「今お付き合いされてる方は?」

「いないな」

「・・・・・・そうですか」


 俺に現在彼女がいないと知った峰本さんが少しだけ嬉しそうに笑ったように見えた。


「まぁ、なんだ、あいつのことは気にしないでくれ。幸い、向こうは峰本さんのことに気がついてないみたいだったし、これから話すこともないだろうからさ」

「はい。分かりました」

「さて、じゃあ、気を取り直して映画の感想会といくか!」

「ですね!」


 峰本さんとの映画感想会は予想以上に楽しく、お店を出た頃には空はすっかりとオレンジ色になっていた。


「話し込んじゃいましたね」

「そうだな。時間大丈夫か?門限とかない?」

「大丈夫ですよ。門限もないです」

「なら、よかった」

「それじゃあ帰りましょうか。帰りは満員電車に乗れるでしょうか」

「なんでそんなに乗りたいのか分かんないけど、もしかしたらこの時間ならあり得るかもな」

「本当ですか!?」

「今日が休日だから分からないけどね」

「可能性はゼロではないんですね?」

「うん」


 頷くと峰本さんは「早く行きましょう!」と俺の手を取った。

 俺は苦笑いを浮かべて、子供みたいにウキウキとしていた峰本さんについていった。


☆☆☆


 駅のホームには遊び帰りの学生や休日出勤の会社員の姿があった。

(これなら、本当に満員電車かもな・・・・・・)

 大きな音を鳴らしながら電車が駅に到着した。

 予想が当たってよかったのか、最悪なのか分からないが、電車は人で溢れかえっていた。

 チラッと峰本さんを見ると、満員電車を見て目をキラキラと輝かせていた。


「の、乗りましょう!」

「いいけど、俺から離れるなよ?」

「はい!しっかりと手を握っておきます!」

 

 そう言って峰本さんは俺の手を握ってきた。

 小さくて柔らくて可愛らしい手をしっかりと握り返して俺たちは電車に乗った。

 ドアが閉まり完全に密封空間となった電車内は、いろんな人の匂いと熱気でクラクラしそうだった。もちろん、座れるわけもなく俺たちはドア付近に立っていた。

 

「大丈夫か?」

「はい。なんとか・・・・・・これが満員電車なんですね」

「そうだな」


 俺の胸にすっぽりと収まる感じで立っている峰本さんは、電車内をキョロキョロと見回していた。

(なんでこんなに満員電車に興味津々なんだろうか・・・・・・)

 その答えは電車が急ブレーキをかけた時に分かった。


☆☆☆

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