第33話 テスト期間1日目①

 テストまで残り5日。

 絶対に忘れていると思っていたのに、綾崎先生は昨日の夜のことを覚えていたらしく、テスト勝負を本当にすることになっていた。

 俺が勝つ条件は百点を取ること。

 それ以外は俺の負け。なんとも理不尽な勝負である。一つのミスも許されない。それに、負けた時の約束が約束なだけに真剣に取り組まないといけないかった。

 いつものように起き、いつものルーティンで1日を始めた。

 

 学校に行っても俺は教室でテスト勉強に勤しんでいた。

 テスト範囲は決まっているが、綾崎先生がどんな問題を出すのかは未知数だった。なにしろ、綾崎先生が作ったテストを解くのは今回が初めてだったからだ。

 他の先生ならある程度、先生の傾向から予想をつけることができる。しかし、今回が初めて受ける綾崎先生のテストでは予想のつけようもない。

 どれだけ頭を悩ませたところで、結局はテスト範囲を完璧に抑えることしかできないのは分かっていた。


「はぁ、どうしたものか・・・・・・」

「どうかされたんですか?」

「峰本さん。おはよう」


 峰本さんが教室にやってきたということは、もうそんな時間か。

 黒板の上にかかっている時計の針は八時を指していた。


「おはようございます。木村さん。それで、どうされたんですか?」


 話してもいいものかと悩んだが、俺が悩んでいることについて峰本さんに話すことにした。


「そんなことをされるんですね」

「まぁね」

「楽しそうですね」

「え?」

「私も参加してもいいですか?」

「いいと思うけど・・・・・・参加したいの?」


 俺が峰本さんのことを見上げると「せび!」大きく頷いた。

 

「そういえば、峰本さんって頭いいんだっけ?」

「自慢じゃないですけど、学年一位ですね」


 そう言って少し照れくさそうに峰本さんは微笑む。

 峰本さんなら綾崎先生の作るテストでも百点を取れるかもしれない。


「凄い。俺も峰本さんくらい頭がよかったら、こんなに勉強しなくてもいいんだろうけどな」

「私だって最初っから頭がよかったわけではないですよ?」

「そうなの?」

「はい。それなりに努力してますから」

「なんか、ごめん・・・・・・」

「大丈夫ですよ。そうだ。よかったら、私が勉強教えてたあげましょうか?」

「それは助かるな」

「じゃあ、木村君の家で勉強会をしましょう!」

「なんで、俺の家で・・・・・・」

「ダメですか?」


 時たま学校で見せるこの『聖女様』の顔は本当にズルい。

 まあ、勉強を教えてもらうわけだし、場所を提供しないとだよな。それに、峰本さんの家でやるよりはいいか。

 あの大きな家には入るだけでも緊張しそうなのに、勉強なんかしても何も頭に入らなそうだしな。

 他にも図書館とかっていう選択肢もあるが、峰本さんは何かと目立つからな。視線が気になって、こっちまで集中できなさそう。

 色々と考えた結果・・・・・・。


「分かった。じゃあ、俺の家でいいよ」

「それじゃあ、放課後に伺いますね」

「うん。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」


 俺に丁寧にお辞儀をすると峰本さんは自分の席に座り、いつものように文庫本を開いた。

 峰本さんが授業中以外に勉強しているところを見たことは一度もない。それなのに、学年一位を取っている。

 家でどれだけ勉強をしているのか分からないが、

結局は頭の出来が根本的に違うんだろうなと苦笑いを浮かべるしかなかった。



☆☆☆

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