第34話 テスト期間1日目②

 そして、放課後。

 峰本さんと一緒に俺の家に向かっていた。

 

「あ、ちょっと、スーパーに寄って帰ってもいい?」

「ええ、どうぞ」


 家に夕飯の食材が何もないことを思い出し、スーパーに寄らせてもらうことにした。


「木村さんの料理食べてみたいです・・・・・・」

「え?」

「いえ、なんでもないです」

「ご飯、食べて帰るか?峰本さんがよかったらだけど」

「え、いいんですか!?」

「勉強を教えてもらうお礼ってことで、それに峰本さんの手料理を食べさせてもらったし、まぁ大したものは作れないけど」

 

 俺が骨折したときに作ってくれた峰本さんの手料理はどれも美味しかった。

 もう一度食べてみたいと思うのは虫がいい話だろう。


「そんなこと気にしないでください。木村さんの手料理が食べれるだけで嬉しいですから」

「そ、そっか。ちなみに何かリクエストとかある?それと嫌いなものとか?」

「基本的に何でも食べれます。なのでお気になさらず、木村さんが今日作ろうと思っていたもので大丈夫ですよ」

「了解」

  

 行きつけのスーパーに到着し、作ろうと思っていた親子丼の材料を一通り買い終えると俺の家に帰った。


☆☆☆


 家に到着したのは午後十七時頃だった。

 

「それじゃあ、さっそく始めましょうか」

「よろしくお願いします。峰本先生」

「ふふ、ビシバシいきますからね?」


 峰本さんは冗談ぽく笑うとメガネのブリッジを人差し指でをクイッと押し上げた。

 

「お手柔らかによろしくお願いします」


 先生役が板についていた峰本さんの教え方は上手だった。

 分からなかった問題がスラスラと解けるようになっていた。

 教え方が上手な人は頭がいいとよく聞く。

 改めて学年一位の実力を思い知ることになった。

 峰本さんに教えてもらいながら勉強をしているといつの間にか一時間が過ぎていた。


「峰本さん、教えるの上手だね」

「そうですか?ありがとうございます」

「めっちゃ分かりやすいよ」

「それはよかったです。といっても私が教えてもらった通りに木村さんに教えているだけなんですけどね」

「そうなんだ。誰に?」

「家庭教師の皆さんです」

「家庭教師がいるんだ……」

「いますよ?いないんですか?」

「あんまりいないんじゃないかな……」


 峰本さんは「そうなんですか」と不思議そうに首を傾げていた。

(さすがはお嬢様といったところか)

 俺とは住む世界が違うんだろうな。


「ちなみに何人いるの?」

 俺がそう聞くと「う~ん。そうですね~」と指を折り曲げていく峰本さん。

 

「三人ですかね。皆さん私が子供の頃から教えてくださってるいい先生なんですよ」

「そうなんだ」


 峰本さんの努力が垣間見え、頭の出来がいいなんて浅はかに思った自分を恥じたくなった。

 

「なんかごめんな」

「ん?何のことですか?」

「いや、こっちの話。さて、そろそろご飯を作り始めるかな」

「何か手伝いましょうか?」

「大丈夫。簡単なものだから。峰本さんはゆっくりしてて」

「分かりました。なら、お言葉に甘えさせてもらいますね」


 俺がキッチンに向かうと峰本さんはリビングに置いてる本棚の中から本を一冊抜き出してソファーに座った。


☆☆☆

 

 

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