第41話 テスト当日③

 国語のテストは1限目だった。

 他のテストを行ってから疲労した頭でテストを受けるより、百点を取れる可能性が高くなるので有り難かった。

 序盤の方は順調にペンを走らせたいった。綾崎先生の言っていた通り、平均六十点くらいは取れるように問題が作られているからなのか序盤は簡単だった。しかし、後半に行くにつれ徐々に問題のレベルが上がっていっているのが分かった。

 

「むずっ・・・・・・」


 小声で思わずそう呟いてしまうほど、後半は難しかった。

 どうやら、意地でも俺たちに百点を取らせないつもりらしい。そこまでされたら、こっちも意地でも百点を取りたくなるだろ。

 この五日間、峰本さんと勉強したことを思い出しながら、解答欄を埋めていった。

 なんとか、全ての解答欄を埋めた頃にはテスト時間は残り5分となっていた。

 全部を見直している時間はなかったので、最後の方のあまり自信のないところを重点的に見直していった。

 

「はい。そこまで」


 その声でペンを置いた。

 先生がテストを回収していく。

 自分の分のテストが回収されると、俺は天を仰いだ。

 正直、自信はない。

 百点を取れてる確率は8割くらいだろうか。

 やれることは全部やった。後は結果を待つだけ。

 その後のテストも真剣に取り組み、放課後となった。


☆☆☆


 放課後。

 峰本さんと一緒にテストお疲れ様会と称してカフェにやってきていた。


「まずは、お疲れ様でした」

「お疲れ様」


 オレンジジュースの入ったグラスを互いにコツンとぶつけ合った。

 そして、俺はオレンジジュースを一気に飲み干した。


「いい飲みっぷりですね」


 その様子を見て峰本さんが愉しげに笑った。

 

「ごめん。喉乾いてて」

「いいえ。お気になさらず」

「こ、このオレンジジュース美味しいね」

「ですね。ここのオレンジジュース大好きです」


 そう言って峰本さんもグラスに口をつけて、頬を綻ばせた。

 ここは峰本さんの行きつけのカフェだった。

 オシャレで雰囲気のいいお店でとても居心地が良かった。


「何か食べますか?」

「そうだね。頭使ったし糖分が欲しいかな。何かオススメある?」

「そういうことでしたら、ショートケーキとかどうですか?ここのショートケーキは絶品ですよ」

「じゃあ、それを頼もうかな」


 手を挙げて店員さんを呼ぶと「私もお願いします」と言われたのでショートケーキを二つとアイスココアを注文した。


「それでテストはどうでしたか?」

「国語に関して言えば手応え8割って感じかな。他のテストはそこそこ」

「意外と難しかったですもんね」

「峰本さんでも難しかったんだ」

「はい。綾崎先生は頭がいいんですね」

「まぁ、あの『A高校』出身らしいからね」

「そうなんですね。あそこの高校は全国から頭のいい人が集まる学校ですよね?」

「だね。峰本さんも『A高校』に入れたんじゃない?」

「かもしれませんね」

「じゃあ、どうしてうちの学校に?」


 俺がそう聞くと少し悲しそうな顔で「秘密」ですと言われてしまった。

 もしかして、何か聞いてはいけにことを聞いてしまったのだろうか。


「そんなこより、今日で私の先生役は終わりですね。木村さんの手料理が食べれなくなると思うと寂しいです」

「ま、まぁ遊びにはいつでも来ていいから、そんなん落ち込まないでよ。それに俺も峰本さんの手料理食べたいし・・・・・・」

「本当ですか!?手料理もご馳走してくれますか?もちろん、私はいつでも作りに行きますよ!」


 峰本さんが体を乗り出したちょうどその時に店員さんがショートケーキをテーブルに運んできた。

 店員さんは苦笑いをし、峰本さんは恥ずかしそうに席に座り直した。


☆☆☆


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