第40話 テスト当日②
会いたくもないやつと会ってしまって俺の心の中はどす黒い感情で渦巻いていた。
こんな気持ちでテストに挑んでいい点数なんか取れるわけがない。
そう思いながらも階段を上がり教室に向かった。
自分の教室に到着すると、すでに時間は八時を回っていたのだろう。峰本さんはすでに席に座っていていて、いつものように読書をしていた。その光景にホッとして、俺の中のどす黒い感情が少しだけ緩和したような気がした。
教室の扉をそっと開いて中に入る。もちろん、そんなことでは峰本さんは本から顔を上げることはない。
俺は自分の席に座って、読書中の峰本さんの横顔を見た。
まさしく『聖女様』のようなその横顔に俺の心は浄化されていくような感覚を覚えた。
声をかけようかと迷っていたら、峰本さんが顔を上げて目が合った。
「あ、木村さん。いらしてたんですね」
そう言って微笑んだ峰本さん。その微笑みは俺の心を優しく包み込んだ。
「おはよう。峰本さん」
「おはようございます」
「なんか、ありがとうな」
俺がそう言うと、峰本さんはきょとんとした顔で首を傾げた。
「どういう意味ですか?」
「ううん。こっちの話だから気にしないで」
「そうですか?」
「そんなことより、いよいよだね」
「そうですね。私の心はメラメラに燃えています!」
「張り切ってるね」
「当然です!木村さんに褒めてもらえるんですから!」
「そうだったね」
「はい!」
意気揚々に頷いた峰本さんは満面の笑みだった。
その笑みはさらに俺の心を浄化してくれた。
峰本さんと一緒にいたら、心が綺麗になりそうだな。
「さて、テスト前の足掻きでもするかな」
「問題出してあげましょうか?」
「お願いします」
他の生徒がやってくるまで、俺と峰本さんはお互いに問題を出し合っていった。
☆☆☆
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