第39話 テスト当日①
そして決戦当日の朝。
いつものようにルーティンをこなし、家を出た。
すると、俺を待っていたかのように綾崎先生が立っていた。
「おはよう。木村君」
「おはようございます。綾崎さん」
テスト期間中のここ数日は気を遣ってくれてなのか、俺の家には一度も来ていなかった。
学校では顔を合わすが、こうして家の前で顔を合わすのは久しぶりだった。
「どう?百点は取れそう?」
「どうでしょう・・・・・・それなりに自信はありますが百点となると時の運としか言いようがないですね。もちろん、全力で挑みますけど」
「いいわね。それでこそ、難しいテストを作った甲斐があるってものよ」
「俺たちとの勝負のためにそんなことして大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ、ちゃんと平均六十点は取れるようなテストにしてあるから」
「それならいいんですけど」
「心配しなくても大丈夫よ。だから、木村君はテストに集中しなさい。毎日夜遅くまで頑張ってたみたいだから、期待してるわよ」
綾崎先生はそう言ってウインクをすると「私はもう少ししてから行くから」と自分の家に入っていった。
そんな綾崎先生の後ろ姿を見送ると、俺は学校へと歩き出した。
☆☆☆
学校少し手前のコンビニにて、会いたくない人物と遭遇した。
「あれ〜。正輝じゃん〜!」
最悪だ・・・・・・。
なんでここにいる?
そして、よりにもよって今日なんだ・・・・・・。
坂根三奈はコンビニの入り口付近でスマホをいじっていた。
俺は顔を合わせないようにとその前を素通りしようとした。しかし、スクールバックを引っ張られ、立ち止まらされてしまった。
「なんで逃げようとしてんのよ〜」
「関わりたくないからだ」
「なんでよ〜。あの頃みたいな楽しく話そうよ〜」
「俺がお前と一度でも楽しく話してたことがあったか?」
俺の記憶では少なくとも一回もなかった。
人の話は聞かずいつも一方的に言ってくるだけの会話。それのどこが楽しいのだろうか。
三奈はそれで楽しかったのかもしれないが、俺はこれっぽちも楽しくなかった。
「しゃあ、俺はもう行くから」
「逃がさないから!正輝に話があって待ってたんだから!」
「俺は話すことなんてない」
そう言って、立ち去ろうとするが三奈は俺のスクールバックを掴んで離そうとしてくれない。
空手の有段者の三奈の力はそれなりに強かった。
「はぁ、俺は話したくないんだ。手短に頼む」
どう足掻いても逃げれないと諦めた俺は三奈と向き合った。
「ありがと!正輝のそういうところが好きだよ!」
「いいから早く話せって。俺だって暇じゃないんだ」
「何をそんなに急いでるの?あ、もしかして、この前の女の子と待ち合わせでもしてる?あの子は正輝の今の彼女なの?」
この前の女の子とは峰本さんのことか。
「そんな関係じゃない。けど、そうだな。彼女と待ち合わせはしてるな」
「へぇー。好きなんだ」
「なんでそうなるんだよ」
「だってその子のところに行きたいんでしょ?」
「そんなんじゃないって、ただ・・・・・・」
「ただ?」
「もういいか?そんなことを話すために呼び止めたなら俺は行く」
これ以上、三奈に詮索されるのが嫌で、今すぐにてもここから立ち去りたくなった。
「話すから!話すから待って!」
「なら、早く話せよ」
「分かったわよ!久しぶりの再会もゆっくりと楽しませてくれないのね!」
嫌いな奴と再会したとして、どうやって楽しめたいうのだろうか。
正直、こうやって話すことも嫌なのだ。
三奈はそれだけのことを俺にした。
「正輝今誰とも付き合ってないんでしょ?じゃあさ、また私と・・・・・・」
「却下だ。無理に決まってるだろ。話したいことってのがそれなら、俺はもう行く」
今度はスクールカバンを掴まれる前に駆け出して逃げた。
そのまま振り返ることなく俺は学校へと急いだ。
☆☆☆
「なんなのよ・・・・・・私が何をしたっていうの・・・・・・そりゃあ、私だって悪かったって思ってるわよ」
そう呟いた三奈はと下を向いてとぼとぼと学校へ向かって歩き始めた。
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