第8話 ハプニングpart2② 綾崎先生と鉢合わせ
「木村さんのお家に到着するまで、お話でもしていましょうか。そうですね~。まずは、いつも木村さんが読んでる本の話とかどうですか?」
「あ、俺も峰本さんがいつも何の本を読んでいるのか気になってた」
「じゃあ、決まりですね!」
まずは私から、と峰本さんが最近読んでいるほんの話をしてくれた。
それから俺たちは俺の家に到着するまで、楽しく読書談義した。
☆☆☆
楽しく読書談義をしていると、あっという間に俺の家に到着した。
橋本さんがドアを開けてくれて俺たちはリムジンから降りた。
「ここが木村さんのお家ですか……」
「うん。ここの七階に住んでる」
「そうなんですね」
何故か峰本さんは俺が住んでいるマンションを見上げていた。
「どうかした?」
「いえ、何でもありません」
「そう。じゃあ、行く?」
「はい」
峰本さんと一緒にエレベーターに乗って七階に向かった。
自分の家の扉の前に立って、俺はあることを思った。
これって、よく考えたらマズイんじゃないか……。
何がマズイって隣に綾崎先生が住んでいるってことがだ。
もしも、峰本さんと一ヵ月の間とはいえ、同棲していることが知られたら停学なんかになったりして。
ドアノブに手をかけたまま立ち止まっていると、峰本さんに「どうかしましたか?」と聞かれた。
「なぁ、やっぱりやめないか?」
「え、どうしてですか?」
俺がそう提案すると、峰本さんは悲しそうな顔をして見上げてきた。
この事情をどう説明しようか。
そう思っていると、隣の家の扉が、ガチャッと開き綾崎先生が顔を出した。
「え、どうして綾崎先生がここに?」
扉の間から顔を覗かせている綾崎先生のことを見て峰本さんが驚いた顔をしていた。
「あら、二人ともどうしたの?」
「えっと……その……」
峰本さんは目を見開いて戸惑ている俺とニコニコしている綾崎先生の顔を交互に見ていた。
厄介なことになってしまった。
どうやって誤魔化そうか。考えてもいい案など出てくるわけもなく、素直に言ってしまった方が楽なんじゃないかと思ってしまった。
そう思っていたら、綾崎先生が震えた声で聞いてきた。
「あ、もしかして二人って付き合ってたり……?」
「つ、付き合ってないです!」
俺なんかと付き合っていると思われたら峰本さんに失礼だ。お嬢様で美人の峰本さんには俺なんかより、もっと相応しい相手がいるはずだ。
「そ、そっか……」
綾崎先生は安心した顔をすると、家から出てきた。
休日ということもあってか綾崎先生はラフな部屋着姿だった。
「じゃあ、どうして二人で木村君の家に入ろうとしてるの?」
「それは……」
「それは私が説明します」
さっきまで驚いた峰本さんが一歩前に出て綾崎先生と向き合った。
今更だけど、さすがは担任だな。学校の時の峰本さんと今の峰本さんはかなり見た目が違うのに一目見ただけで同一人物だと気が付くなんて。
「私が木村さんの腕を骨折させてしまったので、そのお詫びにということで木村さんの腕が治るまで私が介護してあげようかと思いまして」
「なるほどね。そういうこと。その気持ちは確かに立派だし、いいことだと思うけど、それってつまり生徒同士が一つ屋根の下に二人っきりってことよね?さすがにそれは担任としては見過ごせないかな」
ですよね。そうなりますよね。
安易に介護を了承なんてするもんじゃなかったな。
今更になって後悔が湧きあがてきた。せっかくの峰本さんの好意を無駄にしてしまうことになってしまいそうだった。
「ですが……木村さんは利き腕を骨折して生活が不自由でしょうし……」
峰本さんの善意が胸にグサッと刺さる。
本当に申し訳ないことをしたな。こうなるかもしれないことをもっと早くに予想しておくべきだった。
「そうね~。確かにその腕では生活が不便でしょうね」
「なら……」
「だからって、知ってしまったら見過ごせないかな。まぁ、二人が付き合ってるなら別だけどね」
「付き合ってはないです……けど……」
峰本さんは何を言いたそうだったが、「けど」の後に続く言葉は何も言わずに下を向いてしまった。
まあ、世の中には高校生でも同棲してる人なんてたくさんいるんだろうけど、それはあくまでも先生に知られずにということなんだろうな。知られてしまっては許してくれるわけもないよな。
「じゃあ、私はどうやってお詫びをすれば……」
「例えばこういうのはどう?不便になるのは家の生活だけではないでしょ?学校での生活だって利き腕が使えなかったら不便になるでしょ。だから、峰本さんは学校での生活を支えてあげるっているのはどうかしら?学校でだったら、どんなことをしてても目をつぶるわ。もちろん、常識の範囲でだけどね?」
綾崎先生の提案に俺は首を振りたくなった。
だって、相手はあの『聖女様』だぞ。そんな人に学校で介護なんてされてみろ。片腕骨折だけでは済まなくなる。
しかし、俺の意見など通るわけもなく、二人はそれで結託したのか熱い握手を交わしていた。
「分かりました。今はそれで我慢します。木村さんの家での生活をお助けできないのは心苦しいですが仕方ないですね」
「学校での介護は峰本さんにすべて任せるわ。しっかりと助けてあげてね」
「はい。分かりました。では、私はこれで失礼しますね」
「ちょっと待って、せっかくここまで来たんだから、木村君の家に上がていったら?一緒に住むことは見過ごせないけど、遊びに来るのは別にいいからね」
「え、いいんですか?」
「もちろん」
なぜか、俺が了承しないうちに俺の家に上がることが決まってしまってた。さらに、峰本さんが俺の家に遊びに来ることまで確定していた。
そんな二人のやり取りに俺はついていくことができなかった。
「ということなので、家にお邪魔してもいいですか?木村さん」
「あ、うん……」
「私も着替えてから行くから先に入ってて~」
そう言って綾崎先生は着替えるために自分の家に戻って行った。
「じゃ、じゃあ入る?」
「はい!」
嬉しそうに頷いた峰本さんと一緒に家に入った。
それからしばらくして可愛らしい服に着替えた綾崎先生も家にやってきた。
☆☆☆
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