第12話 ハプニングpart2⑥ 夢の中で

 真っ白なウェディングドレスを身に纏った女性が俺の前に立っていた。


(誰だ・・・・・・?)


 まず浮かんだのはその疑問だった。

 そして、ここはどう見ても結婚式場のチャペルだ。


(なんだ、この夢・・・・・・)


 夢だとハッキリと分かっている。

 何故なら、現実の俺はまだ高校生だからだ。

 結婚できるのは二年後。

 だから、これは夢だ。

 


(どうしてこんな夢を・・・・・・?)

 

 次に浮かんだのはそんな疑問だった。

 俺にそんな願望があるということなのだろうか。

 それとも予知夢だったり……。

 いや、ありえないな。俺が誰かと結婚するなんてありえない。

 だって、俺は……。


「木村君……木村君……」


 誰かが俺を呼んでいた。

 その声に俺は目を覚ました。

 すると、目の前に綾崎先生の顔があった。


「やっと起きた。熟睡してたね」

「あれ?なんで綾崎先生が?」

「なんでって、今何時だと思ってるの?」

 

 綾崎先生にそう言われて、俺は壁にかかっている時計を見た。

 もうすぐ19時を迎えようとしているところだった。

 どうやら俺は3時間近く眠っていたらしい。 

  

「夕飯できてるけど、どうする?」

「食べます……」

「もう、全然起きないから死んじゃったんじゃないかと思ったじゃない」

「すみません」

「起きてくれたからもういいわよ。それよりもほらご飯が冷めちゃうから行きましょ」


 そう言って綾崎先生は俺の左手を掴むと起き上がる手伝いをしてくれた。片腕が使えないというだけで一人で起きるのも一苦労なんだな。この時ようやく峰本さんや綾崎先生の申し出がどれだけありがたいものなのかを実感した。

 そう思うと、どうしようもなかったこととはいえ、峰本さんには悪いことをしたなと思った。


「ところで、どんな夢を見てたの?」

「え?」

「なんだか、険しい顔をしてたから」

「そんな顔してたんですか?」

「うん。だからどんな夢見てたのかなって」


 誰かと結婚する夢を見てたなんて言えないよな。

 夢の内容を覚えてはいたが、俺は「覚えてないですね」と言った。


「そっか。覚えてないってことは大したことない夢だったのかもね」

「そ、そうですね」 

  

 リビングに到着して、俺はお昼と同じ席に座った。しかし、綾崎先生は対面の席でなく俺の隣に座った。

 そのことを不思議に思い綾崎先生のことを見ていたら「こっちの方が食べさせやすいでしょ?」と、まるで俺の心を読んだかのように微笑んだ。

 さっき、あんなことを思った手前、俺は綾崎先生の好意をありがたく受けることにした。


「よろしくお願いします」

「あら、やけに素直ね」


 綾崎先生は嬉しそうに笑うとお昼の残り物のおかずをお腹一杯になるまで食べさせてくれた。


☆☆☆

 

 

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