第24話 綾崎先生とデート① カフェ『星空』

 峰本さんとのデートをした翌週。

 今度は綾崎先生とデートをすることになっていた。

 綾崎先生の行きたいところに行くというのが今日のプランだった。 


「それで、まずはどこに行くんですか?」

「最近気になってるカフェかな」


 学校の近くでデートはさすがに危険があるということで、俺たちは電車で二駅ほど移動した町にやってきていた。

 綾崎先生が行きたいらしいカフェもその町にあるらしく好都合ということだった。

 駅から出て歩くこと15分。

 その目的のカフェに到着した。

 カフェの名前は『星空』。なんでもそのカフェの『星空パンケーキ』なるものが巷で有名になっているらしい。

 

「先生ってSNSとかしてるんですか?」

「してるかしてないかで言うと、してるかな。見る専門だけどね。ほら、一応高校生の教師なわけだし、その辺の知識があった方が話も弾ませやすいでしょ」


 本当に生徒想いのいい先生だな。

 そこまでしている先生がどれほどいるだろうか。

 そのことに感嘆しながら綾崎先生と一緒に『星空』の中に入った。

 店内はいかにも若者向けに作られているといった感じの雰囲気漂う空間だった。

 

「なんだか場違い感が凄いんですが……」

「それを言ったら私もだから我慢しなさい」


 綾崎先生も若干恥ずかしそうにしていた。

 それもそのはず、店内にいるのはほとんどが高校生くらいの年齢層だった。綾崎先生と同じ年齢層の人はいなかった。中にはカップルで来ている席も数組見られたが、それ以外はほとんど女友達と一緒に来ているようだった。

 俺たちは可愛らしい服を着た店員さんに案内され、向かい合う形で席に座る。

 席に座るなりすぐに綾崎先生はメニュー表を開き目を輝かせながら「どれにしよう~?」と悩み始めた。

 

「もしかして、綾崎先生、甘いもの好きなんですか?」

「そうね。大好きよ!」


「ねぇ~。どれにする?」と言って俺にメニュー表を見せてくるその距離感はまるでカップルのようだった。

 そんな距離感に少し動揺しつつも俺は綾崎先生と一緒にメニューを見ていった。

 どれも美味しそうで俺がなかなか選べないでいると「まだ~?」と催促された。


「綾崎先生は決まったんですか?」

「私はとっくに決まってる!というか、ここに来た目的がそれだし!」

「どれにしたんですか?」

 

 俺がそう尋ねると「これだよ」と綾崎先生はメニュー表の一番前『星空のパンケーキ』を指差した。

 

「言ってたやつですね」

「そう!これを食べるために来たのに、これを食べないわけにはいかないでしょ!」

「いろんな種類があるんですね」


 どうやらソースが選べるようになっているらしい。

 そこには色とりどりなソースがかけられて『星空パンケーキ』が載っていた。


「先生はどれにするんですか?」


 メニューから顔を上げて綾崎先生のことを見ると、なんだか不満そうな顔をしていた。


「どうかしましたか?」

「あのさ、今日はプライベートなんだから先生はやめて」

「え?」

「名前で呼んでとは言わないけど、せめて先生は外してほしいかな」


 そう言って「ダメかな?」と肘をテーブルにつき、手を組んでその上に顔を乗せ俺のことを上目遣いで見てきた。

 この上目遣いに逆らえる高校生がいるのだろうか。大人の色気と子供のあどけなさを掛け合わせた視線に俺は逆らうことができなかった。


「わ、分かりました」

「じゃあ、呼んでみて?」

「あ、綾崎さん……」

「うん。よろしい!」


 俺が「綾崎さん」と呼んだことに満足したのか綾崎先生は嬉しそうに笑っていた。


「そ、それで、綾崎さんはどれにしたんですか?」

「私はブルーベリーのソースにしようよ思ってるよ!」

「じゃあ、俺はいちごのソースのやつにします」

 

 それぞれ頼むものが決まると綾崎先生が「すみません~」と店員さんを呼んで注文をしてくれた。


☆☆☆

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