第46話 峰本父と顔合わせ②
そんな竜一さんの爆弾発言があったものの、俺たちはなんだかんだ楽しく食事をした。
豪華な食事を堪能した俺はこれから帰るところだった。
「あの、父が変なことを言ってすみませんでした。あまり気にしないでくださいね?」
「わ、分かった……」
頷いたが心の中では「気にするにきまってるだろ!」と叫んでいた。
人とあまり関わらないようにしている俺でもさすがにあんな発言をされては気にするなという方が無理ってもんだ。
まあ、最近は峰本さんや綾崎先生とかなり親密な関係になってきているような気もしなくはないがな……。
「その、父があんなことを言ったからってわけではないのですが、私は木村さんのことが好きです」
「え……?」
「そ、そういうことですので、これからもよろしくお願いしますね!」
峰本さんはそう言うと顔を真っ赤にして逃げるように家の中へと入って行った。
その場に一人残された俺は、さっきの峰本さんの言葉を頭の中で繰り返し反芻した。
「峰本さんが俺のことを好き……」
そんな現実離れしたその現実で俺の頭の中は一杯になっていた。
気が付いた時には家のベッドの上にいた。
☆☆☆
その日の夜、この気持ちをどうにか整理したくて綾崎先生に聞いてもらうことにした。
「なるほどね。由美ちゃん、とうとう言ったのね」
「その口ぶりからすると、知ってたんですか?峰本さんの気持ち」
「むしろ、あれだけ一緒にいて気が付かなかったの?」
「……はい」
「木村君って案外鈍いのね」
「鈍いというか、そういうのに触れないようにしてたからかもしれません」
そう。三奈と別れて以来、俺は恋愛感情というもに触れないように生きていた。人と深く関わろうとしなかった。
「そっか。木村君もいろいろとあったのね」
「まぁ、そうですね」
綾崎先生はそれ以上何も聞いてこなかったので、俺も詳しいことは何も言わなかった。
「で、どうするの?」
「それは……どうすればいいんでしょうか?」
「それは自分の気持ちに聞くしかないわね。木村君は由美ちゃんのことが好きなの?」
「どうなんでしょう。そんなこと考えたこともなかったです」
峰本さんと一緒にいるのは確かに楽しい。趣味も合うし、一緒の空間にいるのも落ち着く。だけど、好きかと聞かれたらどうなんだろう。自分のことなのに自分の気持ちを理解するのは難しい。
「まぁでも、由美ちゃんもすぐに答えを聞きたいって言ったわけじゃないんでしょ」
「はい。その、好きとしか言われてないです」
「それが告白かどうかは置いておいて、一回真剣に自分の気持ちと向き合ってみるのもいいかもね。とか言ってる私は、彼氏に振られたんだけどね!」
綾崎先生は苦笑いを浮かべて缶ビールを飲んだ。
「そうですね。そうしてみます」
「あぁ~。私も恋したいな~。でも、しばらくは恋愛はいいかな」
「どっちなんですか」
「どっちなんだろうね。自分の気持ちっては案外分からないものね」
まるで俺の心の中を見透かしたかのように綾崎先生はそう言って微笑んだ。
その微笑みを見て俺の心は少し軽くなったような気がした。
明日から、峰本さんと真剣に向き合ってみようと思う。
☆☆☆
「二人のことを邪魔できないわね」
私は自分の気持ちに蓋をする様にそう呟いた。
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