最終話 告白

 あれから休みを一日挟んで真剣に考えた。

 峰本さんとどう向き合っていくべきか。

 考えたがそう簡単に答えが出るわけもなかった。


「とりあえず中に入るか……」


 大きく深呼吸をして教室の扉に手をかけた。

 ガラガラと音を立ってて扉を開け教室の中に入った。

 相変わらずの光景。

 窓際の席に座っている峰本さんは綺麗な姿勢で読書をしている。

 窓から差し込む朝日が峰本さんを照らす。

 その横顔は息を呑むほど美しい。

 

「はぁ……なんて話しかければいいのか」


 とりあえず俺は自分の席に座った。  

 そして、そのまま机に伏せた。 

 勉強をする気にもならなかった。

 この心臓の高鳴りをどう沈めればいいのだろうか。


「木村さん、いらしてたんですね」

「み、峰本さん!?」

「どうしたんですか?そんなに驚いて」


 突然声を掛けられ、椅子から転げ落ちた俺のことを見て峰本さんがクスクスと笑っていた。


「お尻大丈夫ですか?」


 そう言って峰本さんは俺に手を差し出してくれた。

 

「あ、ありがと」と峰本さんの手を取り立ち上がった。

 しかし、その瞳を真っ直ぐと見ることはできなかった。

 どうしても意識してしまう……。久しぶりに味わうこの感覚に俺は戸惑っていた。


「あの、何か緊張してますか?」

「そ、そんなことない……」

「嘘です。絶対に緊張してますよね」


 そう言って峰本さんは俺の手をグイッと引っ張る。

 そのせいで俺はさらに緊張してしまうことになった。


「もしかして、父が言ったのが原因ですか?」

「……」


 俺が黙って何も言わないでいると「そうなんですね」と峰本さんは自己完結をした。

 まあ、そっちも多少はあるんだけど……原因は主にあなたの「好き」という言葉です。

 そう言いたかったが口は動かなかった。


「気にしないでいいって言ったじゃないですか」

「む、無理だろ……」

「なら、いっそ付き合っちゃいますか?」

「へっ……」


 峰本さんのその発言に俺は変な声を出してしまった。


「そうしたら、緊張しなくなりますよね?」

「えっと……なんでそんな考えに?」

「う~ん。私が付き合いたいからですかね」

「言ってることが意味わかんないだけど……」


 支離滅裂なことを言われ、俺は峰本さんのことを見た。

 その顔は穏やかで、まさしく『聖女様』の微笑みだった。


「どうですか?試しに私と付き合ってみませんか?」

「ほんとさ、峰本さんって強引だよね」


 まさかの峰本さんからの告白に俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。


「多少強引なくらいじゃないと自分の欲しい物は手に入りませんか」

「峰本さんは俺のことが欲しいの?」

「そうですね。欲しいか欲しくないかで言うと、もちろん欲しいですよ?」


 『聖女様』は悪戯っ子の笑みを浮かべて俺のことを見つめる。

 その笑みを見て、この人に俺のことをあげてもいいと思ってしまった。

 人生とは本当に不思議なものだな。 

 もう二度と恋なんてしないと思っていなのに、今はこんなにも彼女のことが愛おしいと思ってしまっている。

 

「峰本さんは俺のことを大事にしてくれる?」

「そんなの当たり前じゃないですか」

「なら、峰本さんにもらわれるのも悪くないかな」

「上からですね。いいでしょう。一生可愛がってあげますよ」

「そっちの方が上からでは?」

「お互い様です」


 そう言って峰本さんは俺の鼻をツンっと突いた。

 こんなに可愛い彼女に一生可愛がられるのなら、信じてみるのもいいのかもしれないな。

 こうして、この日、俺たちは恋人となった。


☆☆☆


次回最終話になります。

お楽しみに〜!

果たして、この3人はどうなるのか・・・・・・笑

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