第35話 ブランカ考察2

◆ブランカ視点


はぁぁぁぁ。

今日もブランカは上の空になっていた。


学校にいる時間が苦痛でしかない。


多くはないが、それなりに友人はいる。

成績も悪くない。

戦闘に関しては学年トップだ。


それでも、学校にいるこの時間に

彼との差は広がっていくと思うと気持ちが焦る。


最近、私は13階層をソロで戦えるようになった。

レベルが上がり【見切り(小)】を覚え、攻撃回避も以前よりもずっと上達した。


しかし、その間に彼はもう21階層まで進んでいる。

もちろん、ソロで…だ。



2ヶ月前、彼からしばらくパーティーを組めなくなったと言われた。


何故か?言われなくても分かる。

私が足手まといだからだ。


強くなりたい。

彼の横で一緒に戦いたい。


彼の成長速度はおかしい。

何かあるのは分かっている。

いつか私にも話してくれるだろう。


でも、重要なのはそこじゃない。

私が彼に必要とされるか?だ。


私をとっても可愛いと言って告白してくれた。

でもそれだけじゃ嫌だ。


リノアさんもユーリさんもとても美人だ。

しかも、とんでもなく強い。

私達にお金まで支援してくれる。


私だけ…可愛いだけの女で…甘えっぱなしで終わりたくない。

あの3人に追い付きたい。

私だって家族として何か役に立ちたい。



それなのに私は…

学年トーナメント決勝戦なんて物に出なければならない。

これに優勝すれば、実技の単位は授業に出なくても貰える。

ダンジョンに行く時間が増える。


しかし、リノアさんとユーリさんの闘いを見ているとお遊戯にしか思えないのだ。



そう言えば、決勝の相手は彼の兄タイシか…

兄として、才能溢れる弟の強さに触れ、叩きのめされ、何とも思わないのだろうか?


タイシは決勝戦で勝って優勝するとみんなの前で息巻いている。

私も少し前まであそこにいた。

タイシと勝つ度にハイタッチし喜びを分かち合っていた。

苦い思い出だ。

思い出すと吐き気がする。



さぁ、さっさと終わらせてダンジョンに行こう。


トーナメント決勝。


タイシの動きがいつもより良い。

なるほど、『歌姫』リナのバフが掛かってる訳か。

そう言えば、付き合ってるんだっけ?


力・体力・速さ・器用上昇(微)だとすれば

全部1割増しってとこか。


えっ!

今度は私にデバフを掛けてきた。

力・体力・速さ・器用減少(微)だとすれば

全部1割減と言ったところか。


タイシがこっちを見てニヤニヤしている。

そこまでして勝ちたいか!?


リナは申し訳無さそうにこちらを見ている。


上等だ!叩きのめしてやろう。


私は見切りで避け、タイシは盾で攻撃を防ぐ。

お互い決め手に欠ける。


こうなってくると得物の分だけ私が不利か…

私はナックル。タイシは剣と盾。


特に厄介なのが盾。

剣だけならもうとっくに終わってる。


【シールドバッシュ】

盾で殴ったり、押し付けたりすることで防御しながら攻撃もしてくる。

盾は防御だけではない。武器としても使えるのだ。


こちらから攻撃すれば盾でダメージを。

こちらが消極的になれば剣でダメージを与えてくる。


「ぐっ…」

ジリジリと攻撃を受け、押され始めていた。


「がっ…」

マズイ、顔面に盾の攻撃がもろに入った…。

もってあと3発といったところか。


バフとデバフにより、ステータス差が縮まっているせいで、こちらの攻撃は決め手に欠ける。


逆にタイシは盾でジワジワ削ればいい。

もう勝ち筋が見えたのか、タイシはニヤニヤと笑みをこぼしている。


「クックックッ、おら、ブランカさんよ。

どうした?その程度か?あ?」

「このっ…」


私の目標は遥か先を行っている。


いくら卑怯な手を使われたとしても

私だけ…私だけこんなクズ野郎に躓きたくない!


そう思った時だった。



あ!…



「ふふふふふ。あははははははっ。」

「ぁぁ?」


私は笑いが止まらなくなった。

こんな奴でも私に与えてくれる物があると思うと、感謝の気持ちすら湧いてくる。

そう言えば、彼との出会いにも進展にも、いつもコイツが絡んでたっけ?


「ねぇ、タイシ。最後に教えて。

そんな卑怯な手を使ってまで勝って嬉しいの?」

「ブランカ。おまえに仕返ししたくて、ずっと考えてたんだよ。

もっと痛ぶってやるから覚悟しとけ!」


あはははは、これで躊躇無くぶん殴れる。



これがリノアさんの見てる世界か。

もちろん、リノアさんにはまだまだ及ばない。

それでも、そのスタートラインに立てた。



私は【火炎魔法(小)】を唱え、タイシの顔面を狙う。


「うぉ!」

突然の魔法に驚いたのか、盾で顔を隠した。

その隙を待っていたのよ。


さらにナックルに【炎属性付与(小)】を掛け、タイシを横から殴りつける。


「あつっ!」


もう遅いわよ。

すかさず追撃を掛けて盾を叩き落とす。


「ちっ!盾が…。」


ふふふ、これでコイツの勝ちは無くなった。

あなたのお陰で目覚めた力だもの。

たっぷり味あわせてあげましょうね。


目覚めた新しい職業は中級職『魔法剣士』。

スキルは【炎属性付与(小)】【炎魔法(小)】か。


リノアさん達と同じ中級職ダブル。

これでさらに強くなれる。

やっと同じラインに立てた。


正直、この決勝戦はもうどうでも良かったが

この屑だけは燃やしてやらないと気が済まない。


タイシの剣の攻撃を避け、執拗に殴り続ける。

炎属性を付与したナックルを警戒しているのか、足が隙だらけだ。

ローキックを積み重ね、機動力を奪う。

次はボディーだ。

顔面へのフェイントを混ぜ合わせ、ボディーを叩く。

苦しくて身体が曲がった所をストレート。

タイシが吹き飛びダウン。

審判がカウントを取り始める。

力を振り絞って立ち上がろうとしている。


しかし、そんなものは関係ない。

審判の制止を振り切り、さらに顔面蹴り。

倒れた所でマウントを取る。

さぁ、ここからはタコ殴りにしてくれる。

せめてもの優しさにナックルを外し、殴る。殴る。殴る。


「このカスがっ!

2度と私に近寄らないと誓えっ!」


タイシは涙目になり必死に頷くが私の拳は止まらない。

先生達に取り抑えられて、ようやく、決勝戦は終了した。

もう試合と呼べる物でもないが。


あら、鼻が曲がってる。

そう言えば忘れてた。

こんな奴でも将来のお兄様になる人だったわ。


愛想良くしておかないと、印象が台無しだわ。

お兄様に最高の笑顔で微笑みかける。

「タイシお兄様、イオリさんとお付き合いさせて頂いているブランカと申します。

今後とも末長くお付き合いお願いしますわ。」

「ヒィッ…。」


ふふふ、あら、そんなに怯えないで。

ちゃんとご挨拶もできてたでしょ?


イオリ 12歳


職業:寄生虫LV15

擬態職業:プリーストLV10

熟練度:

寄生虫 LV15(1234.24/1500)

プリースト LV10(494.23/1000)

魔女 LV6(259.09/600)

医者 LV8(198.30/800)

諜報員 LV12(592.74/1200)

格闘家 LV6(389.78/600)

大商人 LV0(34.56/50)

魔法剣士 LV0(0/50)

寄生先:4(4/4)

親密度:リノア(94/98)

   ユーリ(87/91)

   ブランカ(74/86)

   リーリア(39/71)

スキル:寄生 

・プリースト : 回復魔法(微・小) 毒回復(小)

麻痺回復(小) 速さ上昇魔法(小) 浄化魔法(小)

・魔女 : 炎・水・土魔法(小) 精神異常耐性

・医者 : 精神安定(小) 解熱(微・小)

病回復(小) 精神上昇(小)

・諜報員 : 人物鑑定(小) 職業偽装(小)

気配遮断(小) 気配察知(小) 視野拡大(小)

聴力上昇(小)

・格闘家 : 格闘術+補正(小) 体力・力上昇(小)


ステータス(↑プ+魔+医+諜+格+寄)

HP 214/214

MP 228/228

体力 145

力  123

魔力 184

精神 208

速さ 153

器用 143

運  142

寄生 24


上位職寄生解放 2/50

成長促進    4/50

潜在職業覚醒  2/50

寄生距離延長  2/50

老化遅延    16/25

性的快楽増強  9/25

吸収率向上   2/25

親密上昇補正  1/25

残ポイント0

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る