第33話 2人は見守る

◆イオリ視点


「ねぇ、イオリ君、前々から『諜報員』のレベルを急いで上げるように言ってきたつもりだけど、どういうつもりかしら?」

「いえ…優先して上げてはいるんですが…ブランカとの時間もあって…」

「言い訳は必要ないわ。

それなら、ブランカとのパーティーはしばらく解消しなさい。

あの子なら11階層ぐらいならソロで問題無いはずよ。」

「………。」


ユーリの言い分はごもっともだ。

『諜報員』LV15で覚える【職業偽装(中)】は最低限必要だと常々言われてきた。

それでも安全とは言えない。と。


「ブランカも含めた私達3人を本当に大切だと思ってるなら、明日から真剣にやってくれないかしら?」

「…はい。」

「厳しい事を言わせてもらうけど

【人物鑑定(中)】で見たあなたのステータスは異常よ。

すでに中級職が5つ。

もうすぐ『大商人』も合わせて6つになるわ。

例え『寄生虫』は表示されなくても、これじゃ、大騒ぎになるのは時間の問題だわ。」

「…はい。」

「はい、これ。

鑑定防止効果の付いたマントよ。

フードを被れば顔も隠せるわ。

明日からこれを着て頑張ってもらえるかしら?」

「…はい。

ユーリ、迷惑掛けてごめんなさい。」

「えぇ、分かってくれれば、それでいいわ。

あなたは私とリノアの全てなの。

厳しい事を言うのも理解してね。」

「…はい。ごめんなさい。」

「まだ12歳だものね。

私達も本当はもっと自由にさせてあげたいの。

でも、イオリ君の職業がそれを許してくれない。

まだまだ先は長いけど、一緒に頑張りましょう。」

「うん…」


今日のユーリは厳しくも優しかった。

落ち込んだ俺をユーリは何も言わずに抱きしめてくれた。

この日はそのまま眠りについた。



次の日。

「それじゃ、20層のボスを倒せるように頑張ってくるね。

いってきます。」


そう言って、3人に手を振る。

既に16階層まではソロで何度も来ている。

問題は17階層の草原エリア

18~19階層の森林エリアだ。

17階層以降はシルバーウルフの群れが現れる。

この群れとの相性が非常に悪い。

動きが敏速なうえ、囲まれると対処できなくなるからだ。


危なくなれば転移石を使って帰ればいい。

今日は行けるところまで行こう。

20階層まで行っても、深夜には帰ってこれるだろう。



17階層でシルバーウルフのグループに遭遇する。

【速さ上昇魔法(小)】【気配遮断(小)】【気配察知(小)】を併用し短剣を構える。


2匹同時に飛び掛かってきた。

1匹は【火炎魔法(小)】で対処し、振り向き様に後ろから襲ってくるもう1匹を切りつける。

【気配察知(小)】のスキルが地味に良い仕事をする。

後ろからの攻撃の気配が伝わってくるからだ。


残り3匹になれば、後はこっちのものだ。

3匹同時でこられても、魔法で1匹。短剣で1匹。

もう1匹の攻撃は避ければ問題無い。


怖いのは4匹以上で同時に来られる時だ。

来てると分かっていても対処しきれなくなる。


寄生を除く全てのステータスが100を越え、確実に強くなっていると感じる。

以前は1人では対処できなかった5匹の群れを難なく倒せるようになっていた。


18階層に入り、ビックベア・人食い虎等

ヒヤッとする場面はあったが大きな問題もなく倒していく。

この【気配遮断(小)】のスキルは小心者の俺にピッタリ合っているのかもしれない。


このままスムーズにいけば、20階層まで行ける。

そう油断した矢先に、しまった!囲まれている。


【気配察知(小)】を越える距離からジワジワと追い詰められていたことに気付く。

分かってる数だけでシルバーウルフ14匹。

失敗した。

不味いと思った時点で木の上に登り、魔法で対処すべきだった。


次の階層に降りる階段前の広場で追い詰められており逃げ場は無い。

まずい、4匹同時に飛びかかってきた。

最初の1匹は魔法、もう1匹は短剣で対処。

1匹の攻撃は避けるも、もう1匹に足を噛みつかれる。

マズイ、マズイっ!


すぐに周りも確認すると、次の2匹がもうきている。

1匹は短剣で倒すも、もう1匹の攻撃を避け切れない。

左腕が切り裂かれている。

いよいよ、ヤバイっ!


次の2匹が飛びかかってくる。

ダメだ、対応しきれない。

これは殺られるっ!

転移石!

と思った矢先に、空から氷の塊が降ってくる。

俺を囲んでいたシルバーウルフが次々と倒されていく。


「イオリ君、頑張ったね。

先生、キュンってしちゃった❤️

ふふふふふ、イオリ君に噛みついた狼共は許せないわね。

ちょっと焼き殺してくる…わ!」


ぁ…ぁ…リノア先生だ。助かった。

先生が空から声を掛けてきた。


「あはは、リノアったら感情的になっちゃって。

ほら傷を見せてごらんなさい。」


ユーリまで来てくれている。

全く気配に気付けなかった。

回復魔法で傷を癒してくれる。


「ユーリ、ありがとう…。」


2人が見守ってくれていた。

安心したせいか涙がこぼれてくる…。


「あはは、イオリ君。頑張ったわね。」

「うん、ありがとう。もうダメかと思いました。」

「ええ、今日はもう十分よ。帰ってゆっくり休みましょう。

今日も私の部屋においで。」

「うん。」


「おい!何どさくさに紛れて連れ込もうとしてんのよ!」

「あははは、あなたが狼と戯れている間に愛を深めていただけよ?」

「はぁぁぁ?

あんたのは愛じゃないでしょ。

ただの性欲でしょうが!」

「あははは。

毎日毎日、飽きもせずに【老化遅延】【老化遅延】って、ため息を付いてるババァよりは

若い分だけ性欲もあるかもしれないわね。」

「ふふふ、あら、ユーリの方こそ、お肌の心配した方がいいんじゃないかしら?

小皺を気にして、鏡の前で皺を伸ばしているの知ってるんだからね!」

「この際だから言わせてもらうけどねぇ!」


また2人の喧嘩が始まった。

まぁ、いいか。

今は2人の怒鳴り合いすら心地好く聞こえる。



いや、、、

風向きが怪しくなってきた…。。。


「ふふふふふ、あぁ、そう。

じゃ、あんたが死ねばいいじゃない!」

先生の魔法がユーリを襲う。


「あはははは、ホント、あなたって馬鹿の一つ覚えね。

私が何の対策もしてないとでも思ってるのかしら?」

ユーリが先生に向かって沈黙の粉を撒き散らし始めた。


「ゲホッゲホッ、魔法が…ユーリ、卑怯よ!」

「あはは、さぁ、覚悟はいいかしら?

いつだったか、埋められて氷漬けにされた日から

ぶっ殺してやろうと思ってたのよ。」

そう言って、先生をタコ殴りにし始めた…。


「死ね!殺してやるっ!」

「ちょっ!ちょっ!ちょっ!

ユーリ、やりすぎだから!」

「イオリ君、離しなさいっ!

このババァはね。

ここで退治するのが世の為なの!」


今日から2人の仁義なき闘いにアイテムの使用が解禁された。

これが更なる闘いの幕開けとなる。。。


もう2人との再会の感動は残っていない…。


イオリ 12歳


職業:寄生虫LV15

擬態職業:プリーストLV9

熟練度:

寄生虫 LV15(6.68/1500)

プリースト LV9(853.28/900)

魔女 LV5(457.53/500)

医者 LV7(587.8/700)

諜報員 LV11(231.96/1100)

格闘家 LV5(381.40/500)

大商人 LV0(0/50)

寄生先:4(4/4)

親密度:リノア(94/98)

   ユーリ(87/91)

   ブランカ(74/86)

   リーリア(32/71)

スキル:寄生 

回復魔法(微・小) 毒回復(小) 麻痺回復(小) 

速さ上昇魔法(小) 浄化魔法(小) 火炎魔法(小)

水魔法(小) 土魔法(小) 精神異常耐性

精神安定(小) 解熱(微・小) 病回復(小)

人物鑑定(小) 職業偽装(小) 気配遮断(小) 

気配察知(小) 視野拡大(小) 格闘術+補正(小)

力上昇(小) 体力上昇(小)


ステータス(↑プ+魔+医+諜+格+寄)

HP 193/193

MP 204/204

体力 131

力  112

魔力 164

精神 186

速さ 138

器用 128

運  129

寄生 24


上位職寄生解放 2/50

成長促進    4/50

潜在職業覚醒  2/50

寄生距離延長  2/50

老化遅延    16/25

性的快楽増強  9/25

吸収率向上   2/25

親密上昇補正  1/25

残ポイント0




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