第37話 最難関への旅立ち

◆イオリ視点


先日、リアに子作りの事を指摘され、自分の将来について考えるようになった。


そもそも、この『諜報員』の熟練度を上げ続ける生活をいつまで続ければいいのか?


見つかれば処分される外道職。


いつ鑑定されるか分からないから

ギルドに行けない。

貴族に近寄れない。

金を借りられない。

目立つ事もできない。


LV15になり【職業偽装(中)】を覚えても

危険性はある以上、この不安定な生活は大して変わらないだろう。


こんな状況で子供を作っても、幸せな家庭を築けるとは思えない。


では、【職業偽装(大)】にはいつなれるのか?

ユーリへの寄生分の熟練度を含めても、レベル1つ上げるのに3ヶ月以上掛かるようになっていた。

直にさらに上がりにくくなる。


LV35までこのままいくと10年ぐらい掛かる。

毎日毎日、1人でダンジョンにこもり、剥ぎ取りもせず、効率を優先して稼ぎ続けて、だ。


そもそも『諜報員』はレベルを上げにくい職業だ。

魔物を倒すにも攻撃系のスキルを覚えない。

人物鑑定で熟練度は入るが、レベルが更新されるまで1人1回しか熟練度が入ってこない。

気配遮断だけでは熟練度を貰える速度に限界が生じる。

他の職業のスキルを使って魔物を倒すと、熟練度がそっちに割り振られてしまう。


最短10年掛かるとして22歳…先生は37歳…か。

計算上、最長16年掛かるとして28歳…先生は43歳…。

【老化遅延】があったとしても

安易に「待ってて下さい」とお願いしていい年月ではない。


いずれにしても、少しでも早く…か。

こういう時はユーリに相談するしかない…。



「ユーリ、熟練度を少しでも早く上げたいんです。

何か…何か良い方法はないですか…?」

「あはは、そう。やっとその気になったわね。

あるわよ。私達にうってつけの所が。」

「私達にうってつけ?」

「ええ。イオリ君の『医者』のLVと精神の数値を教えて。」

「LV8で208です。」

「あはは、イオリ君たら化け物ね。

嫉妬しちゃう。

普通、レベル8なら100もないのよ。」

「僕は他の職業のレベルも上がりますから。」

「本来、そのレベルで行ける場所じゃないけどね。

イオリ君、本当にキツイわよ?

かなり無理することになるわ。

本気で言ってるのね?」

「ユーリがいつか言ってくれた

3人との将来の事を真剣に考えるとやるしかない。

だから、教えてください。」

「分かった。

それなら、今月で治癒院を辞めてくるわ。

来月から一緒に行くわね。」

「えっ!?」

「あのね、私達が行くところはそういう所なの。

行き帰りにも時間が掛かるから、1ヶ月こもって戻ってくる。

それを繰り返す生活になるわよ?」

「………。

ユーリはそれでいいの?」

「えぇ、治癒院よりも、あなたと過ごす方がよほど大切だもの。」

「ユーリ、ごめんなさい。

僕がゆっくりしてたせいで…。」

「ねぇ、イオリ君。謝る必要はないわ。

それにね、今までやってきたことは無駄じゃない。

他の職業のレベルが上がってるから、チャレンジできるの。」

「うん。ユーリ、ありがとう。

相談して良かった。」

「でもね、リノアは強く反対すると思うわ。

説得するのは、あなたの仕事よ?」

「分かりました…。

他に何かやっておくことはありますか?」

「そうね。あと3週間でレベルが上げれそうな職業を全て上げといて欲しいわ。

特に『格闘家』はいくつでも上げて欲しい。」

「分かりました。」


家に帰り、リノア先生を説得する。

先生は泣きながら危険だと激しく抵抗した。

・いつ鑑定されるか分からず、怯えて暮らすのは嫌だ。

・3人と本当の家族になりたい。

1時間掛けて必死に説明した。


それでも、先生は納得しない。

そんな危険な所に行かなくても、このまま暮らせばいいと…


「イオリ君、嫌だ!嫌だ!行かないで!」

先生が俺に泣いてすがりつく。

ダメだ。話を聞こうともしなくなった。


「リノア先生、愛しています。

あなたとの子供が欲しい。

だから…行かせて下さい。」


そう伝えると、泣き崩れて何も言わなくなった。



ごめんなさい。リノア先生…。

あぁ…心が痛い…。




初級ダンジョンには38階層~39階層に最難関と言われる場所が存在する。

魔霧の渓谷。

別名「戦士殺し・魔術師要らず」

そう言われるその場所は

魔法攻撃を浴び続ける為、精神の低い戦士等は直ぐに戦闘不能になる。

そのうえ、魔法攻撃がほとんど通らない為、魔術師は不要となる。


だからこそ、ユーリは「私達にうってつけ」と言ったのだ。

とにかく精神が高くないと話にならない。

すぐに命を落とす。

そのうえで力・速さ・器用が無いと倒せない。


精神が450を越えるユーリが壁役。

スキル【精神上昇(大)】の効果も含めると実質600近くになる。

そして、俺がアタッカーで相手を倒す役割を担う。

俺の能力の不足分は装備品で補う予定だ。



出発の日の朝、ブランカが言った。

「結局、私にはどういう事情かも話してくれなかった…ね。

信用されてないのか不安になる。

何も知らないって泣きそうになる。

私の気持ち分かる?

いつか…いつか話すって約束できる?」

「ブランカ…約束する。」

「そう…。

じゃ、いいわ。気を付けてね。」

そう言って、こちらを見なくなった。

ブランカ…ごめんね…。


リーリアが言った。

「奥様は見送りに来ると、またすがりついて泣いちゃうから来ないって。」

「そっか…」

「ねぇ、言うなって言われてるけど

あんたの装備品にいくら使ったか分かってる?」

「いや…正直、検討も付かない。」

「マジックバック込みで5300万G。

奥様でもかなりキツイ金額よ。

資産をいくつか切り崩されてたわ。」

「………そっか…。」

「そんだけ愛されて、無事に帰って来なかったら、あんたクソね。

ちゃんと帰って来なさいよ。」

「うん…行ってくる。」


5300万Gか…

もう愛情もお金も抱えきれないほど、与えて貰っている。

リノア先生は俺が必ず幸せにする。



「イオリっ!絶対帰って来なさいよ!」

ブランカが泣きながら手を振ってくれている。

俺も手を振り返す。



ダンジョン、転移の間で先生が待っていてくれた。

「イオリぐん…ヒック…わだじもづれでっで…ヒック…」


先生…顔を見れて嬉しい…。


「リノア、今回はダメよ。

あなたは治癒院で熟練度を稼ぐ。

そう決めたじゃない。」

「だっで…ヒック…もじ…なんか…ヒック…あっだら…」

「あはははは、何もある訳ないでしょ。

私が守ってみせるもの。

あんたじゃ、足手まといよ。

すっこんでなさい!」


そう言って、ユーリが先生を挑発する…


「絶対だよ…絶対だよ…私の代わりに絶対守っでよ…」

「リノア…。」

「先生。大丈夫ですよ。

先生が用意してくれた装備がありますから!

1ヶ月ぐらいすぐですよ。」

「イオリ君…約束だよ…

1ヶ月たって…帰って来なかったら…

1人でもそっちに行くからね。」


「えぇ。約束です。

では、先生、いってきます。」



イオリ 12歳


職業:寄生虫LV16

擬態職業:プリーストLV10

熟練度:

寄生虫 LV16(398.64/1600)

プリースト LV10(631.33/1000)

魔女 LV6(471.75/600)

医者 LV8(347.60/800)

諜報員 LV12(1099.98/1200)

格闘家 LV7(404.65/700)

大商人 LV1(43.42/100)

魔法剣士 LV0(28.07/50)

寄生先:4(4/4)

親密度:リノア(95/98)

   ユーリ(88/91)

   ブランカ(76/86)

   リーリア(49/71)

スキル:寄生 

・プリースト : 回復魔法(微・小) 毒回復(小)

麻痺回復(小) 速さ上昇魔法(小) 浄化魔法(小)

・魔女 : 炎・水・土魔法(小) 精神異常耐性

・医者 : 精神安定(小) 解熱(微・小)

病回復(小) 精神上昇(小)

・諜報員 : 人物鑑定(小) 職業偽装(小)

気配遮断(小) 気配察知(小) 視野拡大(小)

聴力上昇(小)

・格闘家 : 格闘術+補正(小)

体力・力・速さ上昇(小)

・大商人 : 物品鑑定(小) 交渉術+補正(小)


ステータス(↑プ+魔+医+諜+格+大+魔+寄)

HP 223/223(↑6+2+1)

MP 231/231(↑0+2+1)

体力 154(↑6+2+1)

力  132(↑6+2+1)

魔力 187(↑0+2+1)

精神 212(↑1+2+1)

速さ 162(↑6+2+1)

器用 150(↑4+2+1)

運  154(↑2+9+1)

寄生 25(↑1)


上位職寄生解放 2/50

成長促進    4/50

潜在職業覚醒  3/50(2→3)

寄生距離延長  2/50

老化遅延    17/25(16→17)

性的快楽増強  9/25

吸収率向上   2/25

親密上昇補正  1/25

残ポイント0

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