第10話 お義父様へのご挨拶

◆リノア視点


将来のお義父様とお義母様になる人だ。

今日の準備に抜かりは許されない。


あった!この本でいいかな?

【大好きな彼のご両親に会う前に】


・服装は相手の身分によって変わる。

平民であれば、カジュアルで清潔感のある服装が好ましい。


なるほど。

危うくドレスでご挨拶に伺うところでしたわ。

私の家は貴族とかではないけど

代々医療系の中級職を排出してきた、いわゆる良家と言われる家系だ。

貴族との縁談もざらにある。

両親は王都からの帰りに魔物に襲われ、帰らぬ人となった。


平民の中流階級以下の方々とは、職場以外ではほとんど縁が無い。

こういった常識も上流階級以外の事は疎いのだ。



この後、イオリ君と待ち合わせしてご挨拶に伺う。

今日はイオリ君との授業は無しだ。

私は準備の為に早めに抜けさせてもらった。


イオリ君のアルバイトが終われば緊張のご対面だ。

サラさんも先に帰ってお料理の準備をしてくれるらしい。


「先生、遅くなりました。

ユーリ先生が大事な用事があると仰られて。

片付けに時間が掛かってしまいました。

ちょっと様子がおかしかったので心配です。」


ふふふふふ、大事な用事って

その辺でやけ酒でも飲んでるでしょw


「ふふふ、あのね、イオリ君。

大人には現実から目をそらさないと

やってられない事もあるんだよ。

そっとしといてあげましょうね。」

「はい、リノア先生。

僕もお仕事頑張って

少しでもユーリ先生の負担を減らしてあげれるように頑張ります。」


あぁん、イオリ君は本当に優しい。

あんなダニにも心配してあげるんだね。

でも確かに人様にご迷惑お掛けしそうで怖い。

後で探してあげようかしら。


「ふふふ、イオリ君、今日は頑張ろうね。」

「父さんは努力したいって言えば

いつも背中を押してくれる人です。

難しく考えなくても大丈夫ですよ。」

「ふふふ、でも先生は緊張しちゃうな。

挨拶が終わったら、引っ越しの準備手伝うね。」

「流石にそれはお願いできませんよ。」

「ううん、先生が手伝いたいの。

イオリ君が住み込みで来てくれるって言ってくれて

先生、とっても嬉しいんだ。」

「リノア先生。

僕も本当に嬉しいです。

その…大好きな先生と…

もっといたいなって…ずっと思ってました。」

「ふふふふふ、イオリ君たら。」


イオリ君、顔を真っ赤にして、頑張って言ってくれだんだ!

あぁぁぁん、イオリ君

もうキュン死しちゃう❤️

イオリ君、引っ越ししたら初日から覚悟しといてね。

仕返しに寝かせてあげないんだから❤️❤️




「つまらない物ですが、皆さんで召し上がってください。」

サラさんにお菓子を渡し、リビングに案内される。

初対面の印象が大事!

お義父様のアレクさんにご挨拶しない…と?


えっ、えっ、えっ!

何でこの場にユーリがいるの?

驚きのあまり3度見してしまう。


あれ?お義父様の目の焦点が合っていない。

まさか、まさか、まさか、まさか!

アイツ、お義父様に薬を盛りやがった!!


「打ち合わせ通りでお願いしますね。」

ユーリがお義父様の耳元で呟いた。


何の打ち合わせなの!

ねぇ!ねぇ!答えてよ!

ユーリが下を向いて、暗い笑みを溢している。


「どうぞこちらにお座りください。」

挨拶も終わり、お義父様に案内されソファーに座る。


「イオリ、こちらのリノア先生の元で

住み込みで勉強したいと聞いてるいるが?」

「うん、父さん。

リノア先生の元でしっかり『プリースト』として勉強したいんだ!」

「イオリ、お前はリノア先生の事をどう思ってるんだ?」

「リノア先生は優しくて丁寧で

いつも僕に親身になって接してくれる立派な先生です。」

「イオリ、歯を食いしばれ。」


えっ!ちょっ!お義父様!!

そう言って、お義父様がイオリ君を殴る…

10歳『プリースト』のイオリ君では耐えられない。

吹き飛ばされて壁に衝突した。


「きゃぁぁぁぁぁ、あなた、ちょっとどうしたの!?」


私もすぐにイオリ君の元に駆けつけて

回復魔法を唱える。


「お義父…アレクさん。

いくらなんでもひどくありませんか?

一体どうなされたのですか?」


また、ユーリがお義父様に呟く。

「パターンBでいきましょう。」


おい!パターンBって何やねん!!


「先生は黙っていて下さい。

子供が道を踏み外す前に

教育するのが親の務めです。」


道を踏み外したのはイオリ君じゃない。

後ろの女よ!

お義父様、目を覚まして!!


クックックックック

ユーリは笑いが堪えられないのか、遂に笑いだした。


「イオリ、お前がリノア先生を

女性として見てるのは聞いてる。

しかも、1回お断りされてるそうじゃないか?」

「えっ、イオリそうなの?」


サラさんが初耳だと言わんばかりに目を見開いている。


「そんなリノア先生の家に住み込みで勉強だと!

何か間違いがあったらどう責任を取るつもりなんだ。」


そう言ってお義父様が机を叩く。

お義父様、人間、間違いがあった方がいいんです!


「父さん、その時はリノア先生と

責任を取って結婚する。

こんな素晴らしい女性は他にいません!」


キャャャャ、イオリ君。嬉し過ぎる❤️

永久保存しておきたい!


「だから、それが勘違いだって分かんねーのか!」


そう言って、イオリ君が殴られ、吹き飛ばされる…

ちょっ、お義父様!?


「他に良い女性が見つからなかったら、また告白してって言われたそうだな。

イオリが傷つかないようにやんわりと断ってるのが、理解できねーのか!」


お義父様、イオリ君以上の子なんていません!

ぁぁぁ、あの時、意地悪言うんじゃなかった。


「責任を取るって金を稼いでからいいやがれ!

こんな良いとこのお嬢様に責任なんか取れる訳ねーだろうが。」

「ちょっと待ってく…んぐっ」


ユーリに口を塞がれる。

こいつ、一体何を考えてるの?


「もう金輪際、治癒院に出入りすることは許さん!」

「流石にあなた、それは!」


そうよ!お義母様、もっと言ってやって!


「人様にご迷惑を掛けるような人間に

育てたつもりはない!

そちらのユーリ先生が教えてくれなかったら大変な事になってたぞ。」

「そういう訳でリノア先生、息子がご迷惑をお掛けしました。

金輪際、近付かせませんのでご安心下さい。」

「ちがっ…んぐんぐ。」


ユーリが私の口にハンカチを入れて引っ張っていく。

クックックックックックックックック

笑い声が聞こえる…


「それでは、私達も失礼します。

イオリ君のことは残念ですが、しばらくしたら、治癒院に戻ってきて下さい!

内科棟のみんなはイオリ君を待ってます。」


お義父様に私とユーリは外に追い出される。

「アレクさん。とても良かったですよ。

迫真の演技でしたね。

私達が出たら、すぐに鍵を閉めて、イオリ君を外に出さないようにお願いしますね。

イオリ君が治癒院に行かないって誓うまでは閉じ込めておいて下さい。


お疲れ様でした。」


ユーリがお義父様に指示を出す。


ユーリが勝ち誇ったかのように

涙を流し笑っている。

「クックックックック。

あっはっはっはっはっは!

いやぁ、面白かった。

木っ端微塵になっちゃったね。」


この外道がぁぁぁっ!

私の命に代えてもこの場で殺シテヤル。


イオリ 10歳

職業:寄生虫LV5

擬態職業:プリーストLV5

熟練度:

寄生虫 LV5(209.01/500)

プリースト LV5(337.11/500)

魔女 LV1(69.25/100)

医者 LV1(5.59/100)

寄生先:2(2/2)

親密度:リノア(70/98)

   ユーリ(29/91)

スキル:寄生 回復魔法(微・小) 毒回復(小)

浄化魔法(小) 火炎魔法(小) 精神異常耐性

精神安定(小) 解熱(微)



ステータス(↑プ+魔+寄)

HP 44/44

MP 50/50

体力 25

力  19

魔力 52

精神 52

速さ 23

器用 29

運  34

寄生 14

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