第39話 弱肉強食の屋敷

◆イオリ視点


初級ダンジョン最難関と言われる魔霧の渓谷。

約1ヶ月、そこでユーリと熟練度を稼ぎにダンジョンにこもっていた。

中級冒険者に立ちはだかる試練と言われるだけのことはある。

魔法攻撃の量が尋常じゃない。

精神が低ければ、物の5分も持たないだろう。


しかし、精神値が異常に高いユーリに、その魔法は届かない。

【魔法攻撃遮断(中)】の付いたコートを脱いでも問題ないくらいだ。

あとはユーリの影に隠れ、タイミングを見計い、魔物エレメントコアの急所を淡々と狙うだけの作業になる。


もちろん、俺も精神は低い訳ではない。

【魔法攻撃遮断(中)】の付いたコートを着ていてもダメージは入ってくるが耐えられない程ではない。


リノア先生に買って頂いた

【魔法生物特攻(中)】

【HP上昇(中)】

【速さ上昇(中)】

【力上昇(中)】

【器用上昇(中)】

【精神上昇(中)】

の付与された装備品があれば事足りる。


往復のロスを含めても『諜報員』の熟練度は今までの倍になった。

しかも、俺が強くなればなるほど、効率はさらに上がっていく。

相性が良すぎるのだ。


ユーリが言うにはレベルが上がれば、お互いソロに。

さらに強くなれば40階層のボス、ビッグエレメントコアを2人で倒す。

そうすれば、41階層に転移できる。

日帰りで行き来でき、さらに効率が上がる。


まだまだ時間は掛かるが【職業偽装(大)】への足掛かりは掴めた。

しばらくはここを狩場にしてLV35を目指す。


リノア先生、ユーリ。

本当にありがとうございます。

お二人のおかげです。



意外かもしれないが、この1ヶ月、1度もユーリと性行為を行っていない。

普段は欲望の化身となるユーリだが、ダンジョン奥地の危険地帯。

俺の身を守る為に、細心の注意を払ってくれていた。


その分、ユーリと色々な事を話し学んだ。

普段あまり見せない、知的で面倒見の良い人柄に改めて触れる。

人として、師匠として、そして恋人として、よりユーリを好きになった。


屋敷への滞在期間は1週間の予定。

また、すぐに魔霧の渓谷へと戻る。


今日の夜はユーリと共に過ごす。

そう約束していた。


しかし、これが次の闘争への火種となる。。。



◆リノア視点


イオリ君が無事に帰ってきた!

ついでにユーリも…。


ブランカから聞いた瞬間、治癒院を早退した。

今すぐ、この手でイオリ君を抱きしめたかった。


イオリ君。イオリ君。イオリ君。イオリ君。

あなたのリノア先生が今帰るからね!


1秒でも早く帰りたい。

居ても立っても居られず

『魔女』のスキル【浮遊】を使い、屋敷へと文字通り飛んだ。


ねぇ、どこ?どこなの?イオリ君。

あなたの先生が、リノア先生が飛んで帰ってきたよ!


この1ヶ月、気が狂いそうだった。


イオリ君の無事を祈る。

→ イオリ君が恋しい。

→ 一瞬だけでも抱きしめて欲しい。

→ 一目だけでも見たい。

→ 声が聞きたい。

→ もう感じれるだけでいい。

→ 泣く

→ たまにダンジョン前でウロウロ


この気持ちの無限ループを毎日、繰り返す。


やっと抱きしめられる!


「あぁ…イオリ君。お帰りなさいっ!

先生ね。毎日、会いたくてしかったなかったんだよ。」


食堂のドアを開けて私は目を疑った。

食堂でブランカと…ついでのユーリが左右から、べったりとくっついて離れない。

私が彼を抱きしめる隙間が無い。

ちょっと、いや、ガチで離れて欲しい。


「ねぇ、婚約者が飛んで帰って来たのよ。

ちょっとぐらい離れるとかできないのかしら。

感動の再会に抱擁はつきものでしょ?」

「あはは、死地で過ごした2人は、もう離れられなくなっちゃったの。

今日の夜は私と一緒に過ごすって、もう約束したもんね❤️」


ガタッ。

ブランカが珍しく食って掛かる。


「ユーリさん、それは無効ですよ。

私達がこの1ヶ月、どんな思いで待っていたか。

そんなの認めません。」

「あはは、ブランカ。言うようになったね。

この屋敷はね、弱肉強食よ?

文句があるなら実力で勝ち取りなさい。」

「ぐっ…」

「弱肉強食て…」

「ほら、目を瞑ってあげるわ。

あはは、お得意の格闘術で倒してみなさいな。」

「ぐっ…」


ブランカは動けない…。

実力差がはっきりと認識できているのだ。


「あはは、ブランカ、良い子ね。

私は賢い子は好きよ。」

そう言って、ブランカの頭を撫でる。


「ぐうぅ…強く…強くなりたい…」

ブランカが震えながら呟いた。


もう魔霧の渓谷で共に戦った優しいユーリはどこにもいない。

もはや悪の手先にしか見えない。。。


「ふふふ、じゃ、私が勝てば問題ないわね。」

「あはは、前回、殺られたことをもう忘れたのかしら?」

「ふふふふふ、いつもの言葉を返してあげるわ。

私が何の対策もしてないと思って?

先に言っとくけど、沈黙耐性(中)の指輪は買ってあるからね。」

「あはははは、上等よ。掛かってきなさい!」


空に浮かんだリノア先生が魔法を乱発する。

ユーリも弓で応戦。

魔法と弓が飛び交う。

風を纏うようになったリノア先生にユーリの弓が届かない。

逆にユーリは【気配遮断(中)】で隠れているが、ジワジワ削られている。

捉えられるのは時間の問題だった。


「ぐっ…私の方が不利…か。

攻撃を与える手段が無い…。」

「ふふふ、ちょっと渓谷で強くなったからって

調子に乗りすぎたわね。」


リノアが魔力増強薬を飲む。

ここでトドメを刺すつもりだ。

「ふふふ、これであなたに勝ち目は無いわよ!」


そう言って、【風魔法(中)】を唱える。

増幅された魔力によって、風がうねりをあげて飛んでいく。


「ぐふっ…さすがリノアね。

魔霧の渓谷のエレメントコアとは魔力が段違いね…」

「ふふふ、これでトドメよ。

さっさと実家に送り返してくれるわっ!」

「あはははは、馬鹿めっ。

そっくりそのまま返してあげるわっ!」

そう言って、魔法反射の鏡を使用する。

1回だけではあるが、どんな魔法も反射させる。


「キャァァァァ!」

増幅した自分の魔法をそのまま受け、リノア先生が墜落する。

そこを狙ってユーリが殴り掛かる。

もうこうなるとリノア先生に勝ち目は無い…。


「あはははは、これで次からも不用意に大きな魔法は使えないでしょ。」

「グギギギギッ」

「あはははは、リノアじゃ、私には勝てないわ。

闘いには駆け引きが必要なの。

リノア。あなたにはそれがないわ。」


「ぅぅ…イオリ君…やっと…やっと会えたのに…

こんなのって…ずっと待ってたのに…

今日は一緒にお風呂に…入りたかった…」

お風呂?先生が泣きながら、俺を呼んでいる…。


「ぁ…ぁ…先生…。リノア先生!」

「あはははははははは、イオリ君。

弱者は全てを失うのよ。

さぁ、ご飯を食べてお部屋に行きましょうね❤️」


こうして、リノアとブランカの前でイオリは引きずられていく。


この1ヶ月、リノアとブランカは誰よりも再会を心待ちにしていた。

イオリの安否を心配し続けていた彼女達に比べれば、ユーリは幸せだったと言えるだろう。


しかし、そのユーリの前に破れさり、イオリを奪われた。


このままでは終われない。

「打倒ユーリ」に燃える2人も熟練度稼ぎに本腰を入れることとなる。



イオリとの夜を過ごす、所詮、ただの順番決め。

明日は普通にリノアの番である…。

いちいち、この屋敷の3人が大袈裟とも言えるだろう。。。


イオリ 12歳


職業:寄生虫LV16

擬態職業:プリーストLV11

熟練度:

寄生虫 LV16(1035.78/1600)

プリースト LV11(77.87/1100)

魔女 LV6(530.08/600)

医者 LV8(416.82/800)

諜報員 LV14(506.79/1400)

格闘家 LV7(603.51/700)

大商人 LV1(69.04/100)

魔法剣士 LV1(9.83/50)

寄生先:4(4/4)

親密度:リノア(95/98)

   ユーリ(89/91)

   ブランカ(76/86)

   リーリア(49/71)

スキル:寄生 

・プリースト : 回復魔法(微・小) 毒回復(小)

麻痺回復(小) 速さ上昇魔法(小) 浄化魔法(小)

・魔女 : 炎・水・土魔法(小) 精神異常耐性

・医者 : 精神安定(小) 解熱(微・小)

病回復(小) 精神上昇(小)

・諜報員 : 人物鑑定(小) 職業偽装(小)

気配遮断(小) 気配察知(小) 視野拡大(小)

聴力上昇(小) 嗅覚上昇(小)

・格闘家 : 格闘術+補正(小)

体力・力・速さ上昇(小)

・大商人 : 物品鑑定(小) 交渉術+補正(小)

・魔法剣士 : 炎属性付与(小)

ステータス(↑プ+魔+医+諜+格+大+魔+寄)

HP 242/242

MP 251/251

体力 165

力  143

魔力 201

精神 226

速さ 175

器用 163

運  163

寄生 25


上位職寄生解放 2/50

成長促進    4/50

潜在職業覚醒  3/50

寄生距離延長  2/50

老化遅延    17/25

性的快楽増強  9/25

吸収率向上   2/25

親密上昇補正  1/25

残ポイント0

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