第40話 ブランカ 最終試験

ユーリさんのあの時の言葉が耳から離れない。


「この屋敷はね、弱肉強食よ?

文句があるなら実力で勝ち取りなさい。」

「ほら、目を瞑ってあげるわ。

あはは、お得意の格闘術で倒してみなさいな。」


あの時、私は動けなかった。

戦う前から諦めてしまった。


回復が本職の『医者』に…

目を瞑っても勝てない。


弱肉強食…

『魔法剣士』に目覚め、その差は埋まると思っていた。

しかし、現実は全く逆だ。


そして…今この瞬間にも差は開いていく。

「力が欲しい。強くなりたい。」


ブランカが呟いた言葉を聞いていた女がいた。



そう、リノアである。


リノアは暗い笑みを溢す。

そろそろブランカを煽っても良い頃合いか。

ブランカが育たないと『寄生虫』の熟練度の伸びはそれだけ遅くなる。


リーリアは商人だ。新たな商機を求めて、いつか離れていくだろう。

最悪、『大商人』LV5で覚える【合縁奇縁】さえ手に入れば、それでいいと思っている。

【合縁奇縁】リーリアがイオリと出会うきっかけとなったスキルだ。

彼の寄生との相性は抜群と言っていいだろう。

そう考えれば、スキルで出会った以上、どんな形にしろリーリアとの付き合いは長くなるのかもしれないが。


しかし、ブランカは今のままでは困るのだ。

今後の方向性も話し合えない。


「ふふふ、私は今月で治癒院を辞めてダンジョンにこもるわ。

イオリ君がいない間は屋敷にいても仕方ないもの。」

「え、リノアさん…まで?」

「ふふふ、イオリ君とユーリは自分達と相性の良い狩り場を見つけたの。

このままだと、私とあなただけ取り残されるわ。」

「そ…それは…」


リノアがブランカの耳元で囁く。

「ふふふ、ブランカが望むなら、あなたと相性の良い狩り場を用意してあげれると思うわ。」


「えっ!本当ですか。」


ふふふ、ブランカが食い付いてきた。

ここでしっかり決意してもらわないと。


「ふふふ、狩り場に相性の良い装備もいくつか見繕ってあげたいと思うの。」

「私も…私も強くなりたいです。」

「ふふふふふ、でも、学校に通いながらでは厳しいわね。」

「うぅ…」

「ふふふ、ねぇ、ブランカ。

休学してイオリ君と一緒に通学免除試験を受けてみてはどうかしら?」

「私、勉強はそこまで得意じゃないから…」

「ふふふふふ、大丈夫よ。

ちゃんと勉強を教えてくれる子を付けてあげるわ。」

「ありがとうございます。

父さんと母さんに聞いてみます。」


はぁぁぁ。リノアは心の中で落胆する。

聞いてみます?

そんな甘いこと言ってたら、ご両親を説得などできやしない。

だから、ブランカ。あなたには何も言えない。


「ふふふ、ねぇ、ブランカ。

私やユーリ、イオリ君の関係がおかしいって思ってるわよね?」

「思ってます。」

「ふふふ、そう。

どうして、家族だって言われてるのに

何も言ってもらえないと思ってるのかしら?」


「それは…信用されて…ないからですか…?」


ブランカは不安になりながら口にする。

もうずっと自分の心の中で自問自答していたことだ。

今回も結局、イオリは何も言わずに魔霧の渓谷へ旅立ってしまった。

私には言えない原因が、やはりあったんだ…。


「ふふふ、ブランカ。信用はしているわよ。

でもね。私達と共に生きていくって覚悟が見れないもの。

あなたはまだ学生さんで、イオリ君は良い彼氏ぐらいにしか思っていないんじゃないの?」

「違います!

私もイオリやリノアさん、ユーリさんと一緒に生きていくと決めてます!」

ブランカがムキになった。あともう一押し。


「ふふふふふ、そう。

それじゃ、私達に覚悟を示して欲しいわ。

ブランカ。あなたにはそれが無い。」

「覚悟を示す…どうすればいいですか?」

「ふふふ、それは自分で考えなさい。」


ふふふ、ブランカ。

これで動かないようであれば、今後の関係も考えないといけないわ。


あなたのおかげでイオリ君は強くなった。

でも、イオリ君はさらに強くなる手段をもう手に入れてしまったもの。


私とユーリがいるこちら側に来るのか?

ある程度の熟練度を稼いでくれるだけの可愛い彼女で終わるのか?

ふふふ、ブランカ。最終試験は始まったわよ。


もう5人目の候補は見つかっていて、接触も始まっている。

あの子はこちらに都合が良い。

覚悟の塊のような娘だ。

私の指示通りに…彼の為に動いてくれるだろう。

生まれた環境が、その想いがあなたとは違う。

いつか、こちら側にきて、彼を支えてくれる人材になる。

そう確信している。


欲しい人材が増えれば、誰かと別れることになる。


ふふふ、ブランカ。

せっかく仲良くなったんだもの。

いつか、あなたとお別れにならないことを祈っているわ。


イオリ 12歳


職業:寄生虫LV16

擬態職業:プリーストLV11

熟練度:

寄生虫 LV16(1035.78/1600)

プリースト LV11(77.87/1100)

魔女 LV6(530.08/600)

医者 LV8(416.82/800)

諜報員 LV14(506.79/1400)

格闘家 LV7(603.51/700)

大商人 LV1(69.04/100)

魔法剣士 LV1(9.83/100)

寄生先:4(4/4)

親密度:リノア(95/98)

   ユーリ(89/91)

   ブランカ(76/86)

   リーリア(49/71)

スキル:寄生 

・プリースト : 回復魔法(微・小) 毒回復(小)

麻痺回復(小) 速さ上昇魔法(小) 浄化魔法(小)

・魔女 : 炎・水・土魔法(小) 精神異常耐性

・医者 : 精神安定(小) 解熱(微・小)

病回復(小) 精神上昇(小)

・諜報員 : 人物鑑定(小) 職業偽装(小)

気配遮断(小) 気配察知(小) 視野拡大(小)

聴力上昇(小) 嗅覚上昇(小)

・格闘家 : 格闘術+補正(小)

体力・力・速さ上昇(小)

・大商人 : 物品鑑定(小) 交渉術+補正(小)

・魔法剣士 : 炎属性付与(小)

ステータス(↑プ+魔+医+諜+格+大+魔+寄)

HP 242/242

MP 251/251

体力 165

力  143

魔力 201

精神 226

速さ 175

器用 163

運  163

寄生 25


上位職寄生解放 2/50

成長促進    4/50

潜在職業覚醒  3/50

寄生距離延長  2/50

老化遅延    17/25

性的快楽増強  9/25

吸収率向上   2/25

親密上昇補正  1/25

残ポイント0

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