第41話 5人目はユーリに捧げられる

話はブランカに覚悟を迫った数日前に遡る。


◆リノア視点


嬉しい誤算だった。

魔力の塊であるエレメントコアの魔石は質が高く、高額で売れるというのだ。

しかも、レアドロップの魔結晶は1つで10~20万。

物によっては、さらに値段は上がる。


そのうち、彼のレベルが上がり、2人共、ソロでいけるようになる。

そうなれば、ユーリの装備を買い足しても、3~4年で投資金額が返ってくる計算だ。


ふふふふふ、これで収入の目処が立った。

そう喜んでいた時だった。



それはリーリアからの定例報告書の片隅に書かれた

融資希望一覧の中にあった。


「ふふふ、ねぇ、リーリア。

この融資希望の男爵家について詳しく教えてもらえないかしら?」

「はい、奥様。

そちらにも記載しておりますが

アルル村が中級ダンジョンの魔物の氾濫により被害を受けました。

村を魔物から守った男爵様とその妻エリザベート様がお亡くなりに。


村は半壊、収穫前の畑が全滅の被害。

収入も食糧も無くなり

融資が無ければ立ち行かない状況と聞き及んでおります。」

「ふふふ、ありがとう、リーリア。

その娘のユリアさんはどんな方かしら?」

「はい。ユリア様17歳 中級職『錬金術士』。

大変美しい方だとか。

今回の件で婚約者の子爵家との縁談は破談になったと。」


リノアから暗い笑みが溢れる。

「ふふふ、そう。

良い子を見つけたかもしれないわ。

融資する価値があるか、近いうちに会いたいわね。

馬車を送って。

すぐにこちらに会う意思があれば、そのまま連れ帰って欲しいわ。

あぁ、食糧援助は100万Gほどお願い。」

「かしこまりました。奥様。」

「ふふふ、ユリアさんを他に取られたくないわ。

急いで馬車を送ってちょうだい。

あなたは他にも頼みたいことがあるから、この町に残ってちょうだい。」



リーリアには理解できなかった。

誰がユリアを取るというのだ?

この人口90名ほどの村は多額の融資が無いと立ち行かない。

ダンジョンからの被害も数年に1度は発生する為、投資対象としても魅力はない。

『錬金術士』は中級職ではあるものの、利益を上げるようになるまでの育成期間が長く、ハズレ職業といっても過言ではない。

子爵家にも見放された女。


ユリアには見目の良いお嬢様という点以外、何の価値も見いだせなかった。



◆ユリア視点


アルル村。人口90名程の長閑な村。

村民の為にあれ。

男爵家は貧しい暮らしながらも村民のことを第一に考え、慕われ続けている。


この村は中級ダンジョンから近く、定期的に被害を受けていた。

今回の氾濫でお父様とお母様を亡くし、急遽、一人娘の私が後を継ぐ。


しかし、援助を当てにしていた子爵家には縁談を破棄され、途方に暮れていた。



村民の皆を家族だと思え、それが尊敬する父の教えだ。

私には皆を守っていく義務がある。


食糧は切り詰めれば、いくらかは持つ。

しかし、もうお金がない。

金目の物は親の形見以外、何も残っていない。


家を無くした村民の為に自宅を解放しているが、再建の目処は立たない。


今日も8歳のミミが家に帰りたいと泣いている。

きっと何とかする…もう少しだけ待ってね…。


11歳になるレオがお腹が空いたと愚痴を溢している。

満足に食べさせてあげられなくて…ごめんなさい。


何もできない自分と先の見通しが立たない現実を前に

いよいよ心が折れる寸前…


そんな時だった。

リノア様から食糧支援と手紙が届いたのは。


融資するに値するか話を聞きたい。

1度、ボルドーまで来て欲しい。

もし、私が急ぎなら、この馬車で連れて帰ってくれるというのだ。

先日、ドレスも売り払った。

卒業した学校の制服に着替え、私は馬車に飛び乗った。



◆リノア視点


「リノア様。

この度は村へ食糧のご支援を頂き、誠にありがとうございました。

お手紙にございました、ご融資の件でお願いにあがりました。」


美しい…。

リノアは息を飲んだ。

ただ、美しいだけではない。気品がある。

同じ女性でも、そう感じてしまう。


チッ、ユーリなら同性であっても手を出すに違いない。

あの女なら…やりかねない…

いや、絶対にやる。。。

夜は鍵を閉めて、ユーリに近付かないように言い聞かせねば。。。


「ふふふ、ユリア様。

アルル村の皆様のお力になれたようで何よりですわ。」

「リノア様、どうか、ユリアと呼び捨てて下さいませ。

お恥ずかしい話ですが、リノア様以外に頼る当てもございません。」

「ふふふ、では、お言葉に甘えて、ユリアさんと呼ばせてもらおうかしら。」

「私にできる事でしたら何でも致します。

何卒、ご融資の件をお願いします。」

「では早速ですが、村の詳しい状況と融資希望額を教えて下さらない?」


話を聞けば聞くほど、村の状況は絶望的だ。

食糧だけでも、贅沢せずに満足に食べさせるなら、月に150万G。

さらに村の建て直しに1000万Gと言ったところか。

1年半の融資で計3700万Gか…


再建途中に再び魔物に襲われる可能性もある。

そうなると、もう目も当てられない。

さっさと村を捨て都市に移り住む方が、よほど現実的と言えるだろう。


しかし、領主を押さえることができるメリットは計り知れない。

この娘が望むのは村民の未来だ。

いくつか拠点を作っても快く応じるだろう。


さらに中級ダンジョンから近いうえに

属性により弱点を突ける『魔女』の私と『魔法剣士』のブランカにはこのダンジョンは相性がいい。

ここで力を付けられる上に、魔物を減らすこともできる。


そして、この娘が何より欲しい。

気品と美しさだけではない。

自分の力の無さ、絶望的な現実を知り

それでも責任感から、村民を守る為なら何でもするという覚悟。

もう素晴らしい人材だと言えるだろう。

欲しい。何としてでも欲しい。


しかし…リスクが大きすぎる。

ここに投資すれば、2年は他に大きな投資ができない。

万が一を考えると、これ以上の資産の切り崩しは避けたいのが本音だ。


「ふふふ、なるほど。分かりました。

ざっと試算して4000万G前後が必要となるわ。

ユリアさん、返済計画はどのように考えてますの?」


子爵も匙を投げたのだ。

返済計画など有る訳もない。

それでも、買い叩くのが交渉の基本。


「申し訳ございません。

返済計画どころか、先の未来すら見えません。

いくら返せるかも分かりません。

少しずつでも必ず返済致します。

村民の為にならないこと以外でしたら、何でも致します。

どうか、どうか…」

「ふふふ、今のお言葉に嘘偽りはないわね?」

「はい。皆を救って頂けるのでしたら…」

「ふふふふふ、分かったわ。

ユリアさん、いえ、ユリア。

来月からこちらに移り住んでもらうわ。

村に戻り荷物を運ぶ準備を。」

「はい。分かりました…。

あの…それでご融資は…」

「ふふふ、もちろん約束は守るわ。

融資に関しては、手始めに1150万。

来月から150万を19ヶ月。

計4000万で問題ないわね?」

「はい、ありがとうございます。

このご恩は一生忘れません。」


そう言って、安堵からかユリアは涙を滲ませている。

この娘にとっての村民は、私にとっての彼と似たような立ち位置なのかもしれない。


「ふふふ、では、ユリア。

こちらの契約書にサインしてもらおうかしら。

心配しなくても大丈夫よ。

約束はきちんと守るわ。

それにしばらくは村とこちらの往復になる予定よ。

あなたも村が気になるでしょう?」

「リノア様、お気遣いありがとうございます。」

「ふふふふふ、ユリア、分かっているわね?

私は約束は守るわ。

あなたにもしっかり守ってもらうわよ?」



こうして、ユリアはリノアとの契約書にサインした。

後日、屋敷に越してくることになる。



「あはは、さっきの娘が5人目ね。

ねぇ、私に少し貸してくれないかしら?」


チッ、ユーリに見られていたか。


「ふふふ、ユーリ、はしたないわよ。」

「あはは、あの娘。とっても気に入ったわ。

ねぇ、ちょっと私の色に染めるだけだから。

減るもんじゃないし、いいでしょ?」


このド変態が!

あんたなんかに貸す訳ないでしょうがっ!


「ふふふ、ユーリ。何度言っても駄目な物は駄目よ。

はっきり言うわ。神に誓ってありえないわ。」

「あら、認めてくれたら

イオリ君との夜の権利は返してあげようと思ったのに。」

「えっ…?」

「あはは、駄目なら仕方ないわね。諦めようかしら。」

「いや、その…」

「あはははは、あら駄目って言ってなかったかしら?」

「そうだっけ…」


悪魔が耳元で囁いてくる…

「ねぇ、リノアがイオリ君と会ってる日だけでいいの。

あなたは何も知らなかった。


ねぇ?それでいいじゃない。」


………。


「ふふふふふ、そうね…。

私とイオリ君が過ごしている間に何かあっても、私は分からないわ。。。」

「あはははは、リノアは良い子ね。

これでみんな幸せになれるわ❤️」


こうして、リノアの神への誓いは1分で撤回された…。

この気品溢れる健気な女性は、ユーリに捧げられることになる。。。



ユーリの獲物になった者の末路は…言うまでもないだろう。。。


イオリ 12歳


職業:寄生虫LV16

擬態職業:プリーストLV11

熟練度:

寄生虫 LV16(1035.78/1600)

プリースト LV11(77.87/1100)

魔女 LV6(530.08/600)

医者 LV8(416.82/800)

諜報員 LV14(506.79/1400)

格闘家 LV7(603.51/700)

大商人 LV1(69.04/100)

魔法剣士 LV1(9.83/100)

寄生先:4(4/4)

親密度:リノア(95/98)

   ユーリ(89/91)

   ブランカ(76/86)

   リーリア(49/71)


スキル:寄生 

・プリースト : 回復魔法(微・小) 毒回復(小)

麻痺回復(小) 速さ上昇魔法(小) 浄化魔法(小)

・魔女 : 炎・水・土魔法(小) 精神異常耐性

・医者 : 精神安定(小) 解熱(微・小)

病回復(小) 精神上昇(小)

・諜報員 : 人物鑑定(小) 職業偽装(小)

気配遮断(小) 気配察知(小) 視野拡大(小)

聴力上昇(小) 嗅覚上昇(小)

・格闘家 : 格闘術+補正(小)

体力・力・速さ上昇(小)

・大商人 : 物品鑑定(小) 交渉術+補正(小)

・魔法剣士 : 炎属性付与(小)

ステータス(↑プ+魔+医+諜+格+大+魔+寄)

HP 242/242

MP 251/251

体力 165

力  143

魔力 201

精神 226

速さ 175

器用 163

運  163

寄生 25


上位職寄生解放 2/50

成長促進    4/50

潜在職業覚醒  3/50

寄生距離延長  2/50

老化遅延    17/25

性的快楽増強  9/25

吸収率向上   2/25

親密上昇補正  1/25

残ポイント0

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る